第5話


「なぁなぁ!図書室行かん?」

季節は少し過ぎ、梅雨が近づく六月初旬。

いつも通り机を並べて弁当を食べていた時いつも通り朱李は突拍子もない事を言った。

『え、図書室ってあの別館の4階にあるとこ?』

「そーそー!」

うちの学校は敷地はとても広いという程では無いが看護科棟、普通科棟、専門科棟、特進科棟、特別教室棟と5つの棟に分かれている。

図書室は専門科棟の1番最上階にあり、階段を昇るのがめんどくさくて1度も行ったことが無かった。


『お前あそこ行ったことあんの?』

「あるよー、面白い先輩たちがカウンター前で屯しててさ結構居心地よかよー!」

『ふーん…』

「てことで莉菜も行こ!」

『えー…』

「行ってきたら?私今日用事あるし」

『え、みなみ行かねぇの?』

「私はいいわー」

「ねっ!行こ!行こ!」

『あー、わかったわかった』

「やったー!!じゃ早く食べて行こ!」

そう言っていつものようにかき込む朱李を見て元気だなーと他人事のようにゆっくり食べてると、早く!と急かされる。

それにはいはい、と少しだけ食べるスピードを上げる。


例の階段を昇りながら早速来たことを後悔し始める。

飯食ったあとにこれはきつい、腹痛くなるやつや、 なんて思いゼェゼェ言いながら階段を昇りきる。

先に昇り切った朱李は勢い良く図書室の扉を開け、扉に付けられた鈴がうるさいほどに鳴り朱李は図書室の中に駆け込んでいき息を切らした私だけを残してバタン!と扉が閉まった。


 扉にそっと近づき中を覗くと先輩たちに囲まれケタケタ笑う朱李がいた。

思わずうわぁ...と思いながら固まっていると先輩の一人が私に気づき荒々しく扉を開けて言った。


「入るんならさっさと入れば?」


ビビリながら俯いた顔を上げた先に居たのは

私より身長が低くて、男の人なのに女の人のような仕草をする怖い雰囲気の先輩だった。

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図書室の無気力な彼女 しの @sinomatu

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