AM10:46

 マリは2時間目と3時間目のあいだの休み時間を見計らって、教室に戻った。マリの姿を見るとクラスメイトが少しざわついていたが、ほとんどの人が見てみぬふりをしていた。

 教室のすみで、マサシの姿はすぐに見つかった。頬に大きな絆創膏を張って、鼻にはティッシュをつめていた。

 マリはマサシに近寄って、

「司馬君、ごめんなさい。だいじょうぶ?」と言った。

「だいじょうぶなわけ、ないだろう。見てみろよ、これ」マサシは自分の頬を指差した。

「本当に、ごめんなさい」マリはきれいにお辞儀をした。

「いや、お前の言うとおりだ」とマサシは言った。「お前の言うとおり、俺は島田さんを守れなかった。何にも、言い訳できない。もっと殴って気がすむなら、好きなようにやってくれ」

「違う」とマリは言った。「カズコちゃんを守る義務があったのは、アンタじゃなくて、私。全部、私のせいよ。付け上がらないで」

 いきなりマリの口調が変わったので、マサシはひるんだ。

「な、なんだよ。いきなり。ケンカしようってのか?」

「あ、いや……ごめんなさい」

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