PM13:19
カズコが家に着くと、母が庭で小型の移植ごてを持って土を掘り返していた。自転車の車輪が回転する音でカズコの帰宅に気付いた母はかがめていた腰をまっすぐにしてカズコを見た。
車庫に自転車を停めると、スカートや靴に海水浴場の砂が付いてないか、もう一度丁寧に掃った。
「おかえりなさい。遅かったね」
「うん、ちょっと学校に残って、答え合わせしてたから」
「お母さん、先にお昼食べたわよ。早く、お家のなかに入りなさい。テーブルの上にご飯できてるから」
母の様子がいつもと違うとカズコは感じた。子供のときに感じた、いたずらをしたり何かを壊したりした後に、母がカズコを叱る前の雰囲気だった。ここ数年、その姿を見たことはなかったが。
帰りが遅くなったことを、怒っているのだろうか。しかし遅くなったと言ってもせいぜい1時間程度で、それほど大きな影響があるはずもない。
「うん。どうしたの? 何かあった?」不安になって聞いてみたが、母は
「早く家に入りなさい」と繰り返した。
テーブルの上には、冷めたオムライスとスプーンが置いてあった。洗面所で手を洗って席に着き、いただきますと言って食べ始めた。
まもなく母も台所に入って来てシンクで手を洗うと、ダイニングテーブルの正面に座った。
「ねえ、カズコ」
「なに?」と食べながら返事をする。
「あなた、逢沢さんのとこのマリちゃんと、どういう関係なの」
「えっ?」
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