スタート・マイ・チャレンジ
簡単な自分でできる限りの編集なども加えていたら、終わる頃には夕日が沈み始めていた。
「すごい時間かかるのね」
「コーラスとハモリまでいれてたからね~……それにほら、初めてだからいろいろマニュアル見ながらだったから」
「まあそう思っておくことにするわ」
プロのCDとかになるともっとかかるんじゃないかしら。今日は妥協は結構してるもので2時間だものね。
まあそのうち45分位は動画とかそっちと合わせる編集に手こずっていたわけだけど。
「家帰ったら動画上げる?」
「そうしようかしらね」
「じゃあ、あげたらURLメールでもなんでもいいから送ってね。マイリストしにいくから!」
「はいはい」
分かれ道で彩花とは別れて、私はまっすぐに家に帰った。
「おかえり~」
そしていつもどおり気の抜けた桂のお出迎え。
「ただいま……」
「遅かったな」
「ちょっといろいろやってたのよ」
「ほうほう」
何かムカつくな~。いや、完全にやつあたりになるからあたりはしないけど、マイペース過ぎないかしら。
「そういえば、桂のお母さんたちは?」
「父さんは締め切り近くてしばらく缶詰だそうだ」
「映画かなんか?」
「じゃねえかな。こだわり強い人と仕事することになるとたまにある。母さんは同窓会だそうで、夜まで帰ってこないらしい……ちなみに経験上朝帰りになる可能性もある」
「そ、そう……」
まあ、人の家庭になにか言うつもりはないけど、すごい家庭よね。
部屋着に着替えてリビングへ。
「そういえば夕飯は食べたりしてきたの?」
「今から作るけど?」
「え? あんたが?」
「うん」
「そう……」
こういう時に作ると言い出したいけど、レシピないと私何も作れないのよね。実家でも家事は手伝ってたけど料理だけは手伝ってなかったから。
テレビ番組が終わると桂は台所に移動した。私はとりあえず机拭いたり、こんであった洗濯物をたたんだりした。
――あれ、ちょっとまって。この状況ってつまりは、今日は桂とふたりきりってことになるのかしら……ま、まあ、桂だし大丈夫よね。
「できたぞ~」
「はいはい」
桂は作った夕飯は、美味しかった。
女子力が負けた気がしてすごい悔しくもなったけど。
片付けは私が行ったわよ。さすがにお世話になっててそこまで全部お世話になる訳にはいかないし、何より桂に全部やらせて完敗するのは納得いかないわ。
終わった後に、リビングの方に戻ると桂がソファに寝転がってテレビを見てた。
「終わったわよ」
「おう、おつかれ」
「テレビ好きね」
「やることがないとも言える」
「そういうことね……」
服がめくれて背中が見えていた。
ちょっと、触ってみる。
「お、なんだ。逆セクハラか……」
人が少しやったら……背中というよりは腰をいい感じに押してやる。
「あがっ……ちょっと、まってくれ。なにした」
「…………腰こってるわね~」
よし、実家からでてからやってなかったしやりますか。
私はソファに寝転がってる桂の足の上に乗る。そしてそのまま腰をマッサージしてあげるわ――
「いででで、ちょっとまって、強い」
「力そんなに入れてないわよ。筋肉固まりすぎなの、姿勢悪いでしょ」
「そ、そうなのか? すげえいてえんだけど。整体師の娘だから信じていいのか」
「少なくとも、私は真面目にやってるわよ。というか本当に、これ筋肉固まりすぎ。ストレッチたまにはした方がいいわよ」
「お、おう……いでぇっ!」
私は自分の両親に習ってきたスキルを駆使して、とりあえず無理ない範囲で、桂の体をもみほぐした。
結果、腰と肩と首のこりがすごかったわね。
「おっ、少し軽くなった」
「一時的なものよ。姿勢正しくしないと、すぐ元通り……とりあえず、まずはその猫背直しなさい!」
「お、おう……すげえな。やっぱ家継ぐのか?」
「昔はそう思ってたけど、今はとくには……というかお母さんたちがそんなに早く決めるもんじゃないって言ってきてね」
「そうか」
「あ、そういえばそうだった」
「うん?」
「ちょっとやることあるから部屋篭もるわね。先お風呂入っちゃっていいわよ」
「わかった」
自室に入って、私はUSBを取り出してパソコンを立ち上げる。
そしてUSBから動画データを移して、動画サイトに投稿。時間は8時半だから若干埋もれそうな気もするけど仕方ないわね。
名前……そうよ。名前どうしよう。
今までは視聴者側だから適当だったけど、投稿するなら決めなくちゃいけないわよね。
うーん。赤坂が苗字だし赤坂サカスとかってそういう名前が危ないわよね。じゃあ、ハル?
なんか普通すぎる気がするし、誰かと被りそう。
うぅん……AKASAKAHARUKAにしてみるましょう。KとAが目立つわね。
なんとなく紙に書いてみると、わかりやすく目立つわね……KA?
さすがにわけわからないわよ。じゃあ――Aが6個あるわ。
6個のA。
――6ノA
――――6-A
【ロア】でいくわよ!
念の為に名前被りも検索してみて――被っていたわ。
じゃあKも多いし【カロア】で行きましょう。それならかぶらないはずだわ!
――ほら、被ってないじゃない。
私は自分のユーザー名を変更した後に、改めて動画の説明文欄を調整。タグには初投稿タグも付けて、投稿ボタンをクリック。
「よし、これで完了ね……反応が怖いから、明日見ましょう」
でも、心が弱めだと自己判断している私はURLだけコピーして彩花にメールで送ってパソコンを閉じたわ。
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