7/26 知らない男
わたしは、彼を見ていた。
知っているけど、知らない男。
どこかで会ったことがあるような。
とっても好きでたまらなかったような。
知っているけど、知らない男。
彼も、わたしを見ていた。
何を会話するわけでもなく、ただひたすら見つめ合い
まわりの人だけが、動いていた。
たぶん、ここはカフェ。
薄暗い、赤いレンガの壁。
木のテーブル。
ブラックのコーヒー。
おしぼり。
二人分。
何分、何時間 見つめ合っていたかわからない。
突然、彼は席を立ち、お金を払わずカフェを出る。
わたしも追いかけるが、財布が見当たらない。
お金を払わないと。犯罪者になってしまう。
財布。財布。わたしの財布はどこ。
ぶつぶつ呟きながら財布を探す。
でも見当たらない。
そのうちに彼はどこかへ消えてしまい、
二度とあうことが出来ないと感じる。
ああ、こんなにも好きなのに。なぜ。
カフェで冷めた二人分のコーヒーを見つめながら
財布を探すのを諦め、時間だけが過ぎてゆく。
今日もいつもの時間に目覚ましが鳴る。
わたしは、冷めた二人分のコーヒのことを時間と共に忘れてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます