第2話 この先、桃太郎と戦うのかと思った

夢の続きがどうしても思い浮かばなかったので突然終わります。

オチがほしい方は読まないほうがいいかも……。


わたしはごく普通の女子高生くらいの女の子。

両親(実在の両親)と旅行にきた。妹(実際には妹はいない)も一緒だ。

長野に行ったときに見た「御本陣 藤屋旅館」という道に平行に立っている旅館が珍しくてその旅館に泊まっていた。(実際には見かけただけで泊まってない)


わたしはなぜか両親に隠れて妹と二人で周囲を探索にでかける。


「見学自由」の看板が立っている洋館にたどり着いた。観光客がたくさん入っていくので、わたしたちも警戒心なく入っていった。


しかし、わたしと妹が入った途端、扉が固く閉じる。

恐ろしくなったわたしたちは携帯電話をかけようとするが両親も警察も圏外で、それはほかの観光客も同じだった。

『順路→』と書かれた赤い→にしたがって、大勢の人たちが塊になって歩き出す。

泣き出すものはおらず、みな緊張と恐怖で一言も発しなかった。


突然、先頭を歩いていた男性が立ち止まったかと思うと黒い影に襲われた。

チンパンジーのような黒く敏捷な生き物は次々と現れ、周りの人間の頭部に食らいつく。

妹が悲鳴をあげそうになるのを手のひらでふさいで、わたしは物陰に引っ張った。

「静かに」

わたしが小声でつぶやくと妹は言葉なくうなずく。妹の涙がわたしの指に落ちる。


夢か?

わたしはここで夢なのかなと気づく。よくあることで、けっこう夢を支配しようして、できたりする。


まもなく。黒い獣が妹の頭部に食らいつき、わたしの指には涙ではなく、血が流れてきた。

黒い獣と目が合う。それはチンパンジーでも怪物でもなく、人の顔をしていた。

シワの刻まれた、全身黒い毛に覆われた、初老の男性である。


嫌!!

わたしは声の限りに叫んだ。


瞬間、わたしは同じ光景を見た。

先頭の男性に黒い影が喰らいついたのだ。

わたしはさっきと同じように妹を物陰に引っ張っていき、左手で彼女の口を押さえながら、右手に500ミリリットルのペットボトルを握り締めた。

まだ開けていないコーラだ。

妹の涙が頬を伝う瞬間、わたしは思い切り妹の頭上でペットボトルを振った。

鈍い手ごたえがあり、黒い影が妹から離れた。


妹は飛びのいて、わたしに近づいてきたもう一匹に持っていたカバンで応戦した。

あちこちで悲鳴やうめき声が聞こえ、チンパンジーのようなケダモノの奇声が響いた。

黒い獣たちは応戦し始めた人間たちにかなわず、四散した。

周りは血や肉片や遺体で地獄絵図だった。


「なんだよ、あれぇぇ!」

叫ぶ男や泣き叫ぶ女。


わたしと妹は肩で息をして、言葉を交わせなかった。


むやみに動かないほうがいい、そう提案したのは今はラフなかっこうだがたぶん、会社では部下を抱えているような役職を思わせる中年の男性でわたしも異論はなかった。

連れを殺されてしまった人々はショックで動ける状態ではなかったし。

数えたら生き残ったのはわたしたちを含めて24人だった。


わたしは妹に先ほどの異変(予知? 時間を巻き戻す?)を伝えるかどうか迷った。


「お姉ちゃん。助けてくれてありがとう」

「わたしも助けてもらった」


妹は屈託なく笑いながらわたしの耳に口を近づけて小声で言った。


「能力、使ったでしょ?」

「……!」


何も言ってないのになんでわかったのか。

この子もなにかの能力者なの?

ううん、それより……この子、誰?


この子はわたしの妹じゃない。

かと言って、両親が何かの理由で養女として引き取ったわけでもない。

気が付いたら一緒に生活をしていて、両親もなんにも不思議に思っていなかったのだ。


「あなた、誰? 誰なの……」

「○○だよ~」(名前は覚えてない)

「あなた、わたしの妹じゃないじゃない」

「モンキーに出会って、暗示がとけちゃったのかぁ。そう、わたしはあなたの妹じゃない。あなたの能力を見極め、使うためにあなたのそばにいたの」

「言っている意味がわからない」

「わからなくてもいいわ。助けてとも言わない。だって、あなた自身が助かるためにはあいつらと戦わなくちゃならないんだもの」

「あの、サルみたいな人たちと?」

「モンキーは先駆けにすぎない」


わたしたちがいい争っていると青年が話しかけてきた。(見かけは妻夫木聡だった)


「おい、お前たち。なにこそこそ話してるんだ。自分たちだけ逃げ出す相談じゃないだろうな」

「そんなことない」

「お前、さっきあいつらの攻撃が見えてるみたいに先読みして動いてなかったか?」

「変な言いがかりはやめてよ」

「映画の撮影だとかドッキリだとかほざいているやつがいるが俺はダチが目の前でやられた。前もって決めてきた旅行じゃねぇ。俺が車ガス欠にしちまって、ついでにこの辺ウロウロしようってことになったんだ。あいつが仕掛けてたとは思えない」

「……」

「なんか知ってるなら教えてくれないか」

「何もわからない。わたしはひろ。この子は○○、妹よ」

「そうか。気ぃつけろよ」

「うん」


遺体のそばに長くはいられないとわたしたちは再び歩き出したが順路の→通りではなく、脱出できそうな窓や扉を探した。手に武器になりそうなものを持って。


わたしはこっそり、青年に告げた。

「歯に気をつけて。よくわからないけど、歯が頭の中に浮かぶの」

「歯?」

「そう、歯」


次に襲い掛かってきたのはサルではなかった。

今度ははっきりとわかる。人面をした犬だ。

人面をしてはいるが話すなどの人間的な行動はとらず、ただ猛攻してくる。

するどい牙で襲い掛かってくる。

わたしは犬とはいえ、人間の顔をしているものを握り締めたボールペンで突き刺す勇気はでず、相変わらずペットボトルで殴った。

妹はためらわずにボールペンで目を突き刺し、ボールペンがなくなると指で突き刺した。

青年は友人から脱がせた革靴を両手にはめ、一匹一匹殴り倒していた。


「痛てぇ!!」


若い男性の腕に犬が喰らい付いた。

殴られても犬は腕を放さず、ひじから下を食いちぎった。


「痛い! 痛いよぉぉ~ なんだコリャ! なんだよコレ!!」


ひじから上がみるみる解けていった。まるで劇薬を被ったかのように。


男はのたうちまわり、その間に3匹の犬が男にくいついた。


わたしたちは助けられずにその場を逃げ出した。


生き残ったのは10数名になっていた。

青年が話しかけてくる。


「あいつらにかまれたら溶けちまうんだな。やっぱりなんか知ってるんだな、お前」

「信じてもらえないと思うけど、本当にわからないの。ただ、頭に浮かぶだけ」

「そんなの信じられない」


わたしは妹に聞こえないように小声で話す。


「知ってるのは妹よ。わたしを利用しようとしているみたい」


妹がこちらに近づいてきた。


「お姉ちゃん、なにこそこそしているの?」


わたしは笑顔を浮かべた妹に戦慄を覚えた。この子、恐ろしい。

青年も同じことを思ったのか少し離れた。


「お姉ちゃん。男といちゃついていていいの? これからもっと恐ろしいやつらがくるのに」

「お願い、わたしたちに助かる方法を教えて」

「それがわかったらわたしだって脱出してるよ。あなたの力が必要なの。あいつらに打ち勝つには」

「あいつらって、なんなの? あとどれだけいるの?」

「あいつらは侵略者よ。次は翼あるもの」

「翼……」



ここで目が覚めた。

起きてるときの想像力では続きが書けなかったので、オチがなくてすみません。

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