〈Level17:飛んで救ってマジカルライフ〉

EXP17

兵士C「……すまんな」


娘「……」


兵士C「……聞いてないか」


ダッダッダッ……


青年「む、娘!」


少女「大丈夫?」


兵士C「色々あったからな……疲れているんだろう」


娘「う、うぅ……あれ、どうして」


兵士C「む、気がついたか。立てそうか?」


娘「大丈夫、です。怪我はしてないし……」スタッ


青年「いやぁ、しかし運よく放送室に迷い込んでよかったぜ」


少女「なんだか途中で警備が薄くなっちゃって、誰もいなくなっちゃったしね!」


子ドラゴン「キュー!キュー!」


少女「放送中の兵隊さんは子ドラゴンが相手してくれたしね!」


青年「消火のために子ドラゴンが吐いた水魔法であの部屋の周りは水溜まりになってるぞ」


娘「……ふふっ、なにそれ」


青年「とりあえずドラゴンのとこに向かうぞ」


少女「まだ毒はどうにもなってないからね!」


娘「う、うん!」


兵士C(警備が手薄に……なるほど……これも兵長殿の行動の結果のひとつということか……)


  ◆


ドラゴン「ぐぅっ……」ビリバチッ


娘「よし、じゃあドラゴンを浮遊魔法で……」


青年「魔力が持つのか?」


娘「今なら大丈夫だよ」


少女「でもドラゴンを町中に連れていくってのはうちの町でもすごい騒ぎになるんじゃ……」


娘「でもそんなことも言ってられないし……」


カラカラカラカラ……


???「……」


青年「……」


???「……」サッ


ガシッ


青年「……」


???「……」フリフリ


青年「……」ヌギッ


男「……あー、もうなんでせっかく被ってる風呂敷を取るかなぁ」


青年「いやいやいやいや怪しいだろどう見てもよ。というか目が合っただろ今」


男「アイコンタクトを送っただろう?」


青年「いらねぇよ」


男「もう、せっかく宝具やら魔法石やらを運び出してるとこなのにさぁ」


少女「えっ、それ……」


男「ここの倉庫のやつと、あの洞窟のやつだね」


青年「漁夫の利の極みだな……とりあえず返してこい」


男「いやいや、ボク怪盗だからさ、これを盗むために潜入してただけだし。真面目に働く気なんてなかったからね」


青年「怪盗……って……」


少女「真面目に働く気があってもなくても真面目に働いてなかったもんね」


男「うるさいなぁ」


娘「あの、不老長寿の魔法石は……」


男「え?そんなものもあったの?時間がなかったから洞窟の方は奥まで見れてないんだよね……戻ろうかな……いやでも……」ブツブツ


少女「なんかすごいダメ人間だね」


青年「元々だろ……」


男「まぁいいや。ボクは撤収することにしよう。城の倉庫の方はほとんど持ってこれてるわけだし、見つかってしまっては元も子もないしね」


娘「ははぁ……」


男「というわけで、これはボクからの口止め料だ」ポイッ


娘「……えっと、これは?」パシッ


男「空間跳躍の魔法石。洞窟から持ってきたもののひとつだよ。そんなに珍しいものでもないけどね」


娘「空間……跳躍……?」


男「まぁ二、三人くらいならそれを使えば一瞬で飛べるんじゃないかな」


娘「えっと、使い方は……」


男「こういうのは習うより慣れろ、だね。使ってあげるから感覚を覚えてみることだ」


娘「ドラゴンも連れていけるんですか?」


男「無理だね」


青年「意味ねぇじゃん」


少女「ポンコツだね」


子ドラゴン「キュッ」フッ


男「キミたちはもうボクを罵倒したいだけだろう」


男「逆だよ。女さんとやらを連れて帰ってくるんだ」


娘「なるほど」


青年「それを先に言えばいいのにな」


少女「回りくどいんだよね!」


男「キミたちを火口にでも転送してやろうか……?」


娘「と、とりあえずお願いします!」


男「了解」カチャッ


青年「銃……?」


男「魔装具ってやつだよ。愛用なんだ」パァンッ


娘「……っ!」グュゥゥゥ……シュンッ


少女「わ!消えた!」


青年「魔法って不思議だな」


男「じゃあ僕もこれでずらかることにしようかな」


青年「……ありがとうな」


男「お礼なら……そうだな、今度アップルパイでもくれるとありがたいな」


パァンッ


グュゥゥゥ……シュンッ


少女「……不思議だね」


青年「魔法かあいつ、どっちがだ?」


少女「どっちもー」


  ◆


グュゥゥゥ……シュンッ


娘「わっ!」ドスンッ


女「きゃっ」


「「…………」」


娘「ど、どうも」


女「……こちらこそ」


娘(すごいピンポイントな魔法だ……)


娘「お、女さん!今、お手、空いてますか!?」


女「微妙だけど……どうしたの?」


娘「ドラゴンの解毒剤が必要で!」


女「……手ならたった今、空いたみたい」


娘「……! ありがとうございます……!」


  ◆


グュゥゥゥ……シュンッ


少女「わっ、戻ってきた」


ドラゴン「ぐぅ……っ」ビリバチッ


女「……なるほど、前に使った毒のうちのひとつと同じタイプみたいよ」


娘「つまり……?」


女「解毒剤ならここにあるわ」


青年「……よかった」


少女「一件落着だね……」


娘「今、倒れたい気分です」


青年「……おつかれさん」ポンッ


  ◆


ドラゴン「……助かった」


女「いえいえ、なんのこれしき。……なんだか大変だったみたいね」


娘「……なんというか、無力ですね、私」


ドラゴン「そんなことはない。娘の行動があり、娘の言葉があるからこその、この結果だ」


…………


町民A「……娘とやら、今まですまんかった」


町民B「俺も……よかったら今度また、アップルパイを持ってきてくれないか?今度は食べるからさ」


町民C「……わっわたしはいままで何も言ってなかったしぃ!?」


娘「なんだか……白々しいね……」


「「「うっ」」」


娘「冗談ですよ」ハハハ


ドラゴン「……よかったじゃないか」


町民D「んひぃっ!」


娘「……ドラゴンはまだ怖がられちゃってるね」


ドラゴン「……しかたあるまい」


娘「あの、女さんがよければ……私、薬についてもっといろいろ、知りたいです」


女「あー、じゃあ、私の弟子にでもなる?」


青年「そんなあっさりと弟子を取れるのか……?」


少女「えっ、じゃあ私もなるなるー!」


女「魔法薬部門はいつも人手が不足してるし、娘ちゃんなら、まぁ……ね……?」


少女「私は私はー?」


女「ちゃんと試験を受けて一緒に働こうね?」


少女「ぶーぶー!」


女「そもそも娘ちゃんならそこまで魔法を使えてるならきっと試験を受けても通るんじゃないかしら」


娘「えぇと、よろしくお願いします……師匠?」


女「師匠ってのはやめてほしいわね」


  ◆


[洞窟前]


バサッ……バサッ……ドスンッ


娘「なんか……いろいろあったね……」


子ドラゴン「キュー……」ヘトヘト


ドラゴン「そうだな……」


娘「えーっと、炎を……」


ボウッ


「「「…………」」」


娘「結構根こそぎ宝石がなくなってるね」


ドラゴン「これは予想以上だな」


娘「お、女さんのとこで働くことになってよかった……」


ドラゴン「奥まで探せば生活に困るほどないわけではないと思うぞ……」

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