〈Level04:縄張り開拓テリトリーメイク〉
EXP04
…………
子ドラゴン「キュー……キュー……」ウツラウツラ
ドラゴン「なぁ、これ……」
娘「はい?」
ドラゴン「俺と子ドラゴンは釣竿で釣る必要、あるか?」
娘「釣竿、三本買ってきちゃいましたからね」
ドラゴン「なんで三本も買ったんだ」
娘「テンション上がっちゃって」
ドラゴン「子ドラゴンとか寝てるぞ」
娘「まぁ暇ですもんねぇ……あっ、ドラゴンさん、引いてますよ」
ドラゴン「うわ、どうすんだこれ」グイグイ
娘「引いてください!思いっきり!」
ドラゴン「思いっきりはダメだろ!ドラゴンだぞ!」
娘「えっ……じゃあ優しく……?」
ドラゴン「うぉぉ……!おい、こっち!」
娘「どっちですか!」
ドラゴン「子ドラゴンの方!」
子ドラゴン「キュー……キュー……」スピー
娘「子、子ドラゴンさーん!?わ、私が引きます!」バタバタ
ドラゴン「いや、そっちも引っ張られてんぞ」グイグイ
娘「子ドラゴンさぁーん!起きてくださーい!」
ドラゴン「おい!おい!釣竿!せめてどっちか握ってくれ!落ちる!落ちる!」
◆
[洞窟]
娘「いやぁ、釣れましたね」
ドラゴン「その敬語、どうにかならないのか?」
娘「家ではずっと敬語だったから……つい」
ドラゴン「家で敬語……?」
娘「町一番のお屋敷の娘なんですよ、これでも」
ドラゴン「人間というのは町一番のお屋敷の娘を生け贄にするのか……」
娘「逆に町一番のお屋敷の娘だから、でしょうか。町の人々にとっては疎ましかったのだと思います」
ドラゴン「ははぁん、色々あるんだな」
娘「両親は私に無関心なんですけどね。もう随分と連絡を寄越してくれませんし」
娘「……だから、生け贄にするのにも強く反対をしていたわけではないんだと思います」
ドラゴン「冷たいもんなんだな」
娘「使用人のメイドさんは最後まで反発してくれていたんですけどね。結局、拐われちゃいました」
ドラゴン「拐われちゃったって……拐われた本人の割には他人事のように言うんだな」
娘「それはもう、流れるような出来事でしたから」
ドラゴン「なんというか、嫌なことを思い出させてしまったな」
娘「面倒見の良さはほんと……大違いだよ、ドラゴンさん」
ドラゴン「ドラゴンさんじゃなく、ドラゴンだ」
娘「そうだったね、ドラゴン……やっぱりなんか違和感あるよ……あります……あれ……?」
ドラゴン「ここから慣れていくんだよ」
◆
娘「そうそう、今日は他にもやることがあるので……あるんだよ?」
ドラゴン「ほう」
娘「畑を作ります!」
ドラゴン「畑?」
娘「町に行ったときに野菜は買っておいたんだけど、やっぱり毎回買いにいくのは違うなーって思ったので……思ったの」
ドラゴン「自給自足はいいことだな」
娘「ということで、はい!くわ!そっちの森の方に開けたところあるかな?植物いっぱいだしきっと野菜もできるよね?」
ドラゴン「……」ガシガシ
娘「つ、爪だけでどんどん土が柔らかくなってる……」ガーン
ドラゴン「耕すくらいなら任せとけ」
娘「流石ドラゴンだね」
ドラゴン「戦闘以外でその言葉を言われたのは初めてかもしれないな」
娘「でも手伝うよ。というか私もやるよ」
ドラゴン「あぁ、自分の力でどうにかするってのも偉いもんだな。一緒にやるか」
娘「いや、暇だからさ」
◆
娘「……ふっ!……へっ!」ガシッガシッ
子ドラゴン「……キュー!……キュー!」ガシッガシッ
ドラゴン「子ドラゴンが使ってるぶんは作業道具も無駄にならなくてよかったんじゃないか?」ガシガシ
娘「余裕……の違いが……すごいね……」ゼェハァ
子ドラゴン「キュー……」ヘトヘト
ドラゴン「適材適所というやつだな」ガシガシ
娘「お昼ご飯にしよ……」ヘトヘト
ドラゴン「そこに果物を置いてあるからな」ガシガシ
娘「調理器具もいくつか買ってきたし、お米も炊けるかな?」
ドラゴン「火の調節次第だな」ガシガシ
娘「不安しかないなぁ」ジーッ
子ドラゴン「キュー?」
娘「子ドラゴンも頑張ろうね」
子ドラゴン「キュー!」
◆
娘「まさか、一日で終わるなんて思ってなかったよ……」
ドラゴン「娘が昼寝している間に肥料も撒いておいたぞ」
娘「あとは野菜の種を植えるだけだね。ある程度本で調べて買ってあるんだけど……それは明日にしよっか」
ドラゴン「もう夕方だしな」
娘「しかし、ベトベトだねぇ」ベトー
ドラゴン「川の方で水浴びでもしてきたらどうだ?」
娘「ちょっと……寒くないかなぁ……」
子ドラゴン「キューキュー!」ボワー
ドラゴン「流石に川の水をお湯にするだけの火力はあるのか?というか魚が死ぬんじゃないか?」
子ドラゴン「キュー……」
娘「うぅ……我慢します……」
ドラゴン「仕方ねぇなぁ……」
◆
ドラゴン「……」ザバー
娘「……」ゴシゴシ
ドラゴン「……」ザバー
娘「……」
ドラゴン「……」ザバー
娘「ねぇ、ドラゴンさん」ゴシゴシ
ドラゴン「ドラゴンさんじゃなくてドラゴンだ」ピタッ
娘「あっ止まるんだ」
ドラゴン「魔法とはいえ、口からお湯を出しているわけだからな。出しながらはうまく喋れない」
娘「それなんだけど……」
ドラゴン「どうした?」
娘「なんか……絵面的に……浴びててすごく微妙な気分になる……」
ドラゴン「……そうか」ショボン
娘「適材適所ってやつだよ」
ドラゴン「ブビビバビビベブ……」ザバー
娘「ごめんドラゴンさん喋られるとお湯の出方がすごく危ういです」ダバッ……ダバッ……
ドラゴン「すまん」ピタッ
娘「大丈夫だよ、浴びさせてもらってるだけありがたいし……」
ドラゴン「……」
娘「……?」
ドラゴン「家には娘が生きてることを知らせてやった方がいいんじゃないか?」
娘「えっ?」
ドラゴン「少なくともその、使用人というのは心配してるんじゃないか?」
娘「そうだろうけど……でも、私が生きていることをどう説明するの?」
ドラゴン「それは……ありのまま……」
娘「きっと信じてくれないよ」
ドラゴン「娘は友達が生け贄で帰って来て同じことを言ったとしたら、信じてなかったか?」
娘「それは……」
ドラゴン「娘はそもそもなんとなくここにいるだけだろう?帰る場所は間違いなくあの町だ。だったら……」
娘「ドラゴンさん……あのね……」
ドラゴン「なんだ?」
娘「風邪引いちゃいます」スピー
ドラゴン「ズバブ」ザバー
娘「お湯吐きながら謝らないでください」ダバッ…ダバ……
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