5 狩り

 国の外れにあるものの、栄える街、ウィルガーン。

 そこの集会所ギルドに、ソルトは顔を出した。


「今、神話生物の目撃情報、ある?」

「あるよ。ホレ。B級セイレーンだ。」


 神話生物に、階級がある。

 下から、E、D、C、B、A、そしてS。

 Sクラスになると、神話生物は魔術というものを使い始める。

 魔術は非常に強力で、Sクラスを相手にできる狩人は世界に5人といないとされており、ソルトはまだ、そこまで達してはいなかった。


 せいぜい、狩れてもAクラス。

 それも、単体でないと危うい程だ。


 __Sクラスまでは、遠いな___


「セイレーンね。場所は?」

「町外れの鉱山の麓。行くか?」

「報酬はちゃんと払ってくれるならね」


 ふん、とソルトは鼻を鳴らした。


 ソルトの仲間であった孤児の数人が死んだのは、原因は何を隠そう、神話生物だ。

 人を喰らう神話生物は孤児の溜まり場を襲ったのだ。

 故に、ソルトは神話生物が嫌いであった。

 神話生物と意思疎通を図ろうとする者も、同じく嫌いであった。


 __何が嬉しくて、仇と仲良くするものか。


 1人孤高の剣士は、道に居る邪魔者神話生物を斬り裂き、歩むのであった。


「そういやソルトちゃん」

「…ん?」


 狩りの準備を済ませ、さあ行こうとする時、受付の男がソルトに声をかけた。


「まだパーティを組む気はないのかい」

「私は群れるのが苦手。それに…周りの人間が私のことをよく思ってないことぐらい、百も承知よ。結構だわ」


 ソルトは自分を育ててくれた2人の顔を思い出す。

 1人は獣人。

 神話生物と見間違えてしまうこともあってか、人間は彼らをよく思っていない。

 もう1人はエルフだ。

 神話生物を発生させたとされるエルフの魔女が原因で、嫌われている。

 その2人と過ごしているのだ。

 嫌われるのは当たり前とも言えるだろう。

 ソルトはそんな因果関係など、心底どうでもよかったが。


「私に気安く接してくれるのはあんただけよ。そこらへんはどうなのよ」

「俺は獣人とか関係なくガルドは苦手だが、カイルくんには助けてもらってるしなあ」

「じゃあ、助けてもらってなかったら私にも冷たかったのかしら」

「いやいや、ソルトちゃんは可愛いから関係ないよ」

「バカじゃないの」


 ソルトは水を飲み干し、席を立ち、刀を手に取った。


「まあでも、あんたには助けてもらってるし、…まあ、ありがとね」

「なんだなんだ、珍しいなあ。行ってらっしゃい、気をつけてな」

「行ってきます」


 ソルトは不敵な笑みを浮かべ、背を向けた。

 町外れの鉱山はすぐそこである。

 ソルトはその辺りの地図を頭に浮かべながら、歩を進める。

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