1章 セイレーン

4 その名はソルト

「1、2、3っ!」

「なんのっ!」


 三本の剣が打ち合う金属音が辺りを満たしていく。

 ガルドは一本、そして成長した少女は二本を使って。


「ソルト、お前俺ンとこ来て何年経った?」

「…10年?」

「もうそんなになるのか。今いくつだ?」

「今年で15!」


 側でカイルがケラケラと笑った。

 剣を打ち合ってる中で行われているとは思えない会話だったからだろう。

 まさにその通り。そしてこれが二人なのだ。

 お互い汗を流しつつも笑みを浮かべ、打ちあう様はお互いを高め伸ばし合う好敵手のよう。

 そして、二人はやがて、強くなっていく。


「ふーっ、疲れた」

「今日はお前が飯番だ」

「…は、はあ!?ガルドでしょ!」

「いいやお前だ!」


 稽古を終え、汗を流した後、口論を始める二人。

 こうなってしまっては誰かが止めない限り終わることはない。

 なので。


「今日はガルドの番でしょ?昨日俺だったんだから」


 カイルが止めなくてはいけないのであった。


 少女…ソルトが二人に拾われて早十年。

 机にあった塩を見たガルドによってソルトと名付けられた少女は、まるでスポンジにように戦闘技術を吸収していった。

 ソルトの師、ガルドもまた、成長して行くのであった。

 お互いを高め合い、教え合いを繰り返す様はどちらが師かわからなくなるほどに。

 好敵手ライバルであり、師であり。

 二人はどこまで成長するのだろうか。


 稽古のあとはソルトは街へ出る。

 があるのだ。

 神話生物狩り。


 神話生物とは諸説あるが、一貫しているのはであるということ。

 一説ではや、などあるが、詳細はわかっていない。

 どこで生まれ、どう育ち、どう生きているのか。

 全てが謎に包まれた生き物である。

 出現時期は約十一年前である。

 国の外れにある村にて、セイレーンと呼ばれる上半身が美女、下半身が鳥という半人半鳥の神話生物が現れた。

 それをきっかけに各地で目撃されるようになり、そして被害も広がった。

 そこで立ち上がったのが、剣士たちであった。


 剣士は神話生物と対峙し、倒していく。

 しかしいくら倒しても沸く神話生物は今や人類の難題のひとつとなっていた。

 今では街で集会所ギルドと呼ばれる場所で目撃情報を集め、狩人を集っては送り出し、結果に見合った報酬を出していた。

 ソルトもそうやって稼ぐ一人として、街に出るのであった。

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