3 強くなりたくて

 ガルドは苦悩していた。


 成り行きで拾った少女ではあるが、飲み込みが悪い。

 剣術も、体術もバラバラである。

 剣の握り方が悪い。

 体の動かし方も悪い。


 もっとも、彼だけがそう思っているのであって、そもそも彼の教え方が下手なのだ。

 剣術を教えようとすれば


「いいか、剣を握って、ビュッとやってバッとやってギュンッ!だ。」


 体術を教えようとすれば


「体を動かす時は、シュッとやってシュババッと動いてシュンッ!だ。」


 となる。

 これではどれだけ才能があっても花は開かないだろうとカイルは頭を抱えていた。

 まだ自分が教えたほうが良い気がする。

 戦闘なんてできるものではないが。

 そんなことをぐるぐると考えるほどには。


 それでもなお、めげずに教わろうとする少女は素晴らしいものだ。


「いいか、剣を握ったらビュッと」

「そんなのでわかるわけないじゃないバカなの」

「なにぃっ!?」

「要するに」


 ある日のことであった。

 いつもの如く、少女とガルドが稽古に励んでいたところ、少女の毒舌が飛んだ。

 睨みつけたガルドの鼻先から、少女の姿が消えた。

 ガルドが振り返るより早く、少女は背後に回る。

 再び振り返るより早く再び背後に回り、腕を取って足をかけ、体制を崩させた。


「…こういうことでしょ」


 ガルドには言葉もないようであった。


「…す、すごいね!ガルドから一本取るなんて!」

「えへへ。動き見てたらなんとなく、こう動いたらいいかなとか、わかるようになった」


 強くなりたくて、と少女は付け加えて呟いた。

 ガルドは素直に感心したのか、恥じらいつつも少女の頭を撫でた。


「お前…見込み以上だな。…もっとちゃんと教えてやる。来い」


 晴れて少女は、ガルドの弟子となる。



 そして数年後。

 少女は15の少女へと成長し、物語は幕を上げる。

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