第2回 〈ファストフーズ〉襲来!
夕姫と知絵はパラセーリングを終え、海岸にもどってきた。ロープを巻きもどして、モーターボートの上に降り立つ。ボートは夕姫の操縦で、ゆっくりと桟橋につく。
夕姫が元通りパラシュートをたたみ、バッグに詰め直すのを、知絵も手伝った。パラシュートというやつは、決められた手順できっちりたたまなくてはいけない。ぐちゃぐちゃにたたんだら、開かなくなるかもしれず、危険だからだ。
ようやくたたみ終わったとき――
「あれ?」
夕姫は空を見て首をかしげた。ぶぅーんというハエのような音を立てて、小さな飛行機が三機、近づいてくる。胴体は遊園地にある飛行機の乗り物のように小さい。ヘリコプターのように大きなローターが上についていて、後ろには前進するためのプロペラがある。一人乗りのオートジャイロという乗り物だ。
「どうしたの?」
「いや、あの三人……」
夕姫は目がすごくいい。まだ百メートル以上離れているのに、三機のオートジャイロに乗っているの三人の髪の色が、赤と緑と黄色であることに気がついたのだ。
「まさか!?」
目を丸くして見つめているうちに、オートジャイロはぐんぐん接近してきて、ふたりの頭の上を超低空飛行でかすめた。「ひゃっほう!」というピクルスの楽しそうな声が聞こえる。
「〈ファストフーズ〉!?」知絵がさけぶ。
オートジャイロは別荘のほうへ飛んでゆき、砂浜に着地した。三人がばらばらと降りて、別荘へ駆けこんでゆくのが見える。
「また何か悪いことする気よ!」
「させるもんか!」
そう言うなり、夕姫は駆け出していた。
「な、なんだね、君たちは!?」
〈百年暗号〉をかこんで次郎さんたちと話し合っていた総一郎さんは、いきなりベランダの手すりを乗り越えて侵入してきた三人組にびっくりした。急いで駆けつけてきたので着替えるひまがなかったのか、三人とも水着のままだ。
見たところ、武器をかまえているのはピクルスとオニオンだけ。それも先端がラッパのように広がった変な銃だ。
「どうもー。〈百年暗号〉をいただきにまいりましたー♪」先頭に立ったトマトが、ピザの配達人のようにあいさつする。「わたしたち〈ファストフーズ〉、お見知りおきを」
「〈ファストフーズ〉だと!?」次郎さんがこわい顔で立ち上がった。「そうか、前に知絵ちゃんを誘拐したやつらだな。夕姫から聞いてるぞ!」
さっと格闘技のかまえをして、七絵さんたちを守るように立つ次郎さん。ステラさんも「ぬすっとか!?」と言いながら、戦うかまえをする。こちらもかなり強そうだ。
しかし、トマトは平然とした顔だ。
「おやあ、そちらが夕姫ちゃんのお父さんですか? どうも初めてお目にかかります。娘さんにはいろいろとお世話になっております」
にこやかな顔でていねいにおじぎをする。次郎さんはついつられて、「あ、いや、こちらこそ」と頭を下げた。
その瞬間、ピクルスとオニオンが、手にした銃をパンパンと撃った。飛び出したのは弾丸ではなく、パーティに使うクラッカーのような、色とりどりの細いテープだ。それが次郎さんの上半身にからみつく。
「うわ、なんだこれは!?」
次郎さんはもがいたが、テープはおそろしくじょうぶなうえ、強力な接着剤がついていて、体から離れない。
「ひきょうだぞ!」
「おほほほほ。さすがに虎ノ門夕姫の父親とまともに戦う気はございませんわよ」
「姉き、夕姫ちゃんにいっぺん負けたことあるもんね」
トマトはにこやかな笑みを浮かべたまま、「うるさい」と手の甲でオニオンの鼻をなぐった。
「〈百年暗号〉はいただいていきますわ」
そう言って、テーブルに近づくトマト。その前にステラさんが立ちはだかる。
「わたすものか!」
ぶんぶんとパンチをふるうステラさん。トマトは「おっとっと」と言いながら、たくみに攻撃をかわす。
「へえ、あんた、けっこう強いじゃん」戦いながら感心するトマト。
「ジャングルで育ったもんでな!」
「ふうん? でも、夕姫のパンチよりは遅いね!」
すきを見て、トマトは腰のホルスターから銃を抜いた。飛びかかってくるステラさんめがけて、パンッと撃つ。ステラさんは顔面にテープがからみつき、何も見えなくなった。もがくステラさん。
トマトはテーブルの上にあった〈百年暗号〉をひっつかんだ。「ごめんあそばせー」と言うと、身をひるがえし、バルコニーを手すりを飛びこえて退散する。ピクルスとオニオンもそれに続いた。
「あらあら、すばやい人たちだこと」
七絵さんが妙なことに感心する。
「待てー!」
次郎さんは興奮して追いかけようとするが、テープがからまって思うように動けない。
「待っててくださいね。ハサミを取ってきますから」
七絵さんはとても冷静だ。テープを切るためのハサミを探しにいった。
砂浜をオートジャイロに向かって走るトマトたち。そこに夕姫が駆けてきた。
「こらあ! また悪いことやってるなあ!」
三人の真正面から突進してくる。ピクルスがとっさにクラッカー銃で撃とうとした。だが、夕姫の動きは目にも止まらない。ひょいと転がって、ピクルスの足元に滑りこむと、逆立ちして腹を蹴とばす。ピクルスは吹っ飛ばされた。
トマトが攻撃をしかけようとする。だが夕姫は逆立ちしたまま、足をびゅんびゅんとプロペラのように振り回し、トマトを寄せつけない。オニオンがクラッカー銃を撃とうとしたが、トマトに当たりそうで撃てない。
夕姫のつまさきが、〈百年暗号〉を握っていたトマトの左手にヒットした。
「しまった!」
紙きれはトマトの手を離れ、宙を舞った。ちょうど強い風が吹いてきた。紙は風に乗って、ひらひらと海のほうへ飛んでゆく。
「まずい! 追うんだ!」
「まかせとき!」
ピクルスとオニオンが紙きれを追って走り出す。夕姫もそれを追おうとしたが、トマトがその前に立ちはだかった。
「おおっと、行かせないよ!」
夕姫はトマトにびしりと指をつきつけた。
「前に助けてやった恩を忘れたか!?」
トマトは一瞬、たじろいだものの、目に見えない荷物を横に置くしぐさをして、
「それは置いといて……」
「置いとくのか!?」
「これはビジネスなんだ。情をはさんじゃいられないんでね!」
トマトが攻撃を開始する。反撃する夕姫。
ものすごいバトルが開始された。
トマトはクラッカー銃で夕姫の動きを封じようとする。でも、ちょこまかと動き回る夕姫には、何発撃っても当たらない。その攻撃のあいまをぬって、夕姫がパンチやキックを浴びせる。それをかわしながら撃ち続けるトマト。ついに弾がつきた。「ええい!」と銃を投げ捨て、自分もパンチとキックの攻撃に切り替える。
砂浜で展開される、水着の女の子(十一歳)と水着の女性(年齢は秘密)のバトル。勝敗はまだわからない。
一方、足の遅い知絵は、それでも一生懸命走って、ようやく三機のオートジャイロの近くまでやってきた。
そこに風に舞って紙きれが飛んできた。知絵の顔にぺたんとはりつく。
「きゃっ」
知絵は紙を顔からはがし、そこに書かれた謎の数字をしげしげと見つめた。
「何、これ……?」
そこにピクルスとオニオンが走ってきた。この紙を追ってきたのだと気づき、知絵はとっさに紙きれをたたんで、水着の胸に押しこんだ。
「おおっと、それをわたしてもらおうか」
手を差し出すピクルス。知絵はこわかったが、それでも胸を両手で押さえ、首を横に振った。この紙が何かわからないが、大事なものにちがいない。悪人にわたすわけにはいかない。
「ええい、よこせ!」
ピクルスが飛びかかって、知絵の胸から紙きれをぬき取ろうとする。
「きゃー、チカン!」
知絵が金切り声をあげたので、ピクルスはびっくりして手をひっこめた。知絵は胸をしっかり押さえ、顔を赤くして、ピクルスをにらみつける。
「……スケベ」
「うわーっ、ちがうちがう!」ピクルスの顔も真っ赤になった。「お、おれは悪人だけど、そんなシュミはねえぞ!」
「だって、胸さわろうとした!」
「いや、だからそれはその紙がほしいんで……お、おい、やめろ!」
ピクルスは悲鳴のような声をあげた。知絵がさらに紙を深く押しこんでしまったからだ。紙は下のほうまでずり落ち、今や水着のおなかのところにある。
「……オニオン、お前が取れ」
「ええー!? ぼ、ぼく、いやだよお。チカン呼ばわりされちゃうよお」
「おれだっていやだぞ」
ピクルスとオニオン、大の男ふたりが、ひとりの女の子を前に途方にくれていた。知絵の水着の中に入った紙きれを取ろうとすると、どうしても水着に手をつっこまなくてはならない。でも、そんなことをしたらチカンになってしまう……。
「何やってんだ、お前ら!」夕姫と戦いながら、トマトが遠くからどなる。「〈暗号〉はどうした!?」
「そ、それが……」
「手が出せねえんだよ!」
「知絵ちゃんの水着の中に入っちゃって!」
「何ぃ!?」
夕姫のパンチを間一髪でかわしながらも、トマトはあせっていた。戦いは互角だが、長引けば次郎さんがテープを切って駆けつけてくるにちがいない。ぐすぐずしてはいられない。
「だったら竜崎知絵ごとさらっちまえ!」
オニオンとピクルスは顔を見合わせた。
「なるほど」
「その手があったか!」
知絵は青くなったが、逃げるひまなんかない。飛びかかってきたオニオンとピクルスに、たちまち捕まってしまった。
「そらよっと」
ピクルスはいやがる知絵を持ち上げ、自分のオートジャイロの機首にまたがらせた。クラッカー銃で撃つ。知絵の下半身はテープにからみつかれ、オートジャイロにくっついてしまった。
「えっ、えー!?」知絵は青くなった。「こ、こんなかっこうで空飛ぶの?」
「ひとり乗りなんでな。その席でがまんしてくれ」
ピクルスは小さな操縦席にもぐりこむと、エンジンをスタートさせた。後ろのプロペラが回り、オートジャイロは砂浜を走り出す。
オートジャイロのローターは、ヘリコプターのローターとちがい、エンジンの力で回るのではない。前から風を受けると、その力で風車のように回るのだ。充分にスピードが上がると、ローターの回転も速くなり、浮き上がる力も強まる。
ほんの百メートルほど滑走しただけで、ピクルスの操縦するオートジャイロは空に舞い上がった――先に知絵を乗せて。
「きゃああああ!」
知絵は悲鳴をあげた。バラセーリングもこわかったが、これはもっとこわい。飛行機の先端にまたがって空を飛んだ女の子なんて、たぶん史上初めてだろう。
続いてオニオンのオートジャイロも飛び上がる。二機のオートジャイロはゆっくり旋回し、まだバトルを繰り広げている夕姫とトマトの上に飛んできた。
「そりゃ!」
ふたりは黒い缶ジュースの缶のようなものを投げた。砂の上に落ちたそれを見て、トマトはとっさに目を閉じる。
バアアアンッ!
缶が強い光を放って爆発した。「うわっ!?」夕姫は目がくらみ、何も見えなくなった。これはスタングレネード(閃光手りゅう弾)と言って、爆発力はたいしたことはないが、音と光で相手をマヒさせる武器なのだ。
ようやく目を開けることができたときには、すでにトマトは自分のオートジャイロに駆け寄り、飛び乗っていた。
「またな!」
オートジャイロをスタートさせるトマト。夕姫は必死に走って追いかけたが、オートジャイロはすぐに空中に飛び上がってしまった。
「はっはあ、ここまでおいで!」
トマトはうれしそうな声をあげた。
トマトたちと知絵を乗せた三機のオートジャイロは、海面から十メートルぐらいの高さを、沖に向かってのんびりと飛んでゆく。飛行機とちがい、あまりスピードが出ないのがオートジャイロの欠点だ。
「すまねえな、お嬢ちゃん、そんな席で」
あやまるピクルス。知絵はぶるぶるふるえていて、答えることもできない。オートジャイロの機首にまたがって空を飛ぶのもこわいが、水着姿でお尻をピクルスの顔に向けて突き出してるかっこうが、恥ずかしくてたまらない。知絵の顔はこわさで青くなったり、恥ずかしさで赤くなったりしていた。
「さすがに夕姫もここまでは追いかけてこれないだろう!」
そう言って笑うトマト。
「これで三勝二敗だね!」とオニオン。
「ああ、アジトにもどったら、とりあえず〈百年暗号〉を……ええ!?」
なにげなく振り向いたトマトはびっくりした。夕姫がモーターボートに乗って追いかけてくるではないか!
ボートのスピードはものすごく、たちまちオートジャイロに追いついてしまった。
「お姉ちゃんを返せーっ!」
そう言うなり、夕姫はせおっていたパラシュートのひもを引いた。
ぶわん!
パラシュートが広がると同時に、ロープがするするとのび、夕姫の体は空に舞い上がってゆく。知絵の乗っているピクルスのオートジャイロに近づき、手を伸ばす。
「お姉ちゃーん!」
「うわっ、バカ、よせ! 危ない!」
あわてるピクルス。大きく広がった夕姫のパラシュートが、オートジャイロのローターに当たりそうなのだ。パラシュートがローターにからまったら、ローターの回転は止まり、海面に墜落してしまう。上昇しようにも、知絵が乗っている分、重くなっているため、思うように高度が上がらない。
夕姫のほうもその危険に気がついているので、オートジャイロに五メートルぐらいまでしか近づけないでいる。
「お姉ちゃん、飛び移って!」
「そんなこと言われても……」
知絵は泣きそうだった。お尻をもぞもぞ動かすが、下半身にからみついたねばねばのテープは取れそうにない。たとえ取れたとしても、飛行中のオートジャイロからパラシュートに飛び移るなんて芸当ができる女の子は、たぶん夕姫ぐらいだろう。知絵がやっても、海に落ちるだけだ。
知絵はカナヅチだ。海に落ちたら、かなり高い確率で死ぬ。
「この!」
ピクルスはオートジャイロを旋回させ、パラシュートをよけようとした。夕姫もリモコンでボートを操作し、それを追う。
「何やってんだよ!?」
トマトが上からパラシュートに近づいてきた。オートジャイロの車輪をパラシュートにぶつける。
「ええい、しつこいぞ! 落ちろ!」
だが、何度ぶつけても、ふとんをたたくようなボスボスという音がするだけだ。夕姫はまるで気にしていない。
「こうなったら……」
やむなく、ピクルスは銃を取り出した。振り向いた知絵はびっくりする。それはクラッカー銃ではなく、本物の銃だった。
「やめて!」
「心配すんな。パラシュートのロープを切るだけさ」ピクルスはにやりと笑う。「あの子ならこのぐらいの高さから海に落ちたって、死にゃしないだろ」
それはそうかもしれないけど、と知絵は思ったが、それでも妹が撃たれるのを見るのは、いい気分ではない。
ピクルスは左手で操縦しながら、右手でねらいをさだめ、引き金を引いた。
バーン!
ピクルスの銃の腕は見事だった。一発で、夕姫とボートをつないでいるロープを撃ちぬいたのだ。ロープはぷっつりと切れた。
そのとたん、ボートから自由になったパラシュートは、急に上昇した。上にいたトマトはよけようとしたが、まにあわない。パラシュートはトマトのオートジャイロにぶつかり、覆いかぶさる。
「うひゃ~っ!?」
すっとんきょうな悲鳴をあげるトマト。パラシュートはローターやプロペラにはからみつかなかったものの、それ以外のオートジャイロの機体をすっぽり包みこんでしまったのだ。操縦席のトマトにも、頭からパラシュートがかぶさる。マンガに出てくるような、白いシーツをかぶったオバケみたいなかっこうだ。
「ま、前が見えな~い!」
パニックになって、めちゃくちゃに操縦レバーを動かすトマト。オートジャイロは下に夕姫をぶら下げて、大きく旋回しはじめた。
「姉き~っ!」
「そっちは方向が逆だぞ~っ!」
ピクルスたちがどなるが、トマトには聞こえない。オートジャイロはUターンして、陸のほうに向かってゆく。
「くそっ、このっ!」
パラシュートをはがそうと必死になっているトマト。だがパラシュートは風の力でぴったりとオートジャイロにはりついてしまっている。
夕姫はというと、パラシュートのロープをたぐって、操縦席までよじのぼろうとしていたが、オートジャイロが右に左に揺れるたびに、ロープもブランコみたいに大きく揺れるもので、なかなかうまくいかない。
やがてオートジャイロは陸の上にもどってきた。下を見て、夕姫はひやりとした。今や足の下にあるのは青い海ではなく、緑色のじゅうたんをしきつめたような、あざやかな熱帯のジャングルだ。ほんの数メートル下を、木のこずえがびゅんびゅんと飛びすぎる。海なら落ちても助かるが、こんなところに落ちたら大けがをする。いや、死ぬかもしれない。
前方に森におおわれた山があった。なだらかな低い山だが、このまま飛びつづければぶつかってしまう。
「高度上げて! 高度! 山にぶつかっちゃう!」
その声が聞こえたので、トマトは操縦レバーを引いた。だが、さっきのピクルスと同じで、夕姫がぶら下がっているものだから、その重みで機首が思うように上がらない。レバーをいっぱいに引いても、ほんの少し、上を向いただけだ。
それでもオートジャイロは、じりじりと高度を上げた。山の斜面にそって上昇してゆく。てっぺんの木に夕姫の足がぶつかりそうになったが、夕姫はひょいと足をひっこめてかわした。
どうにか山をこえた。だが、その向こうには次の山がある。こんどは飛び越せそうにない高さだ。
「左! 左に旋回して!」
夕姫は指示した。前が見えないトマトは、それにしたがうしかない。オートジャイロはやや左にコースを変え、山と山の間にそって飛行した。
「右! ほんのちょっと右! ああ、行きすぎ、ちょっともどして!……そう、そのまままっすぐ。次は左!」
まるでスイカ割りだ。
「どこ飛んでんだ!? 海はどっちだよ!?」
「わかんないよ、そんなの! あっ、高い木がある! 右! 右!」
ぶら下がったまま指示を出し続ける夕姫。オートジャイロが墜落したら自分も死ぬかもしれないのだから必死だ。
オートジャイロは谷にそって飛び続けた。ピクルスとオニオンのオートジャイロも心配して追いかけてきているが、助ける方法がわからず、少し離れたところを飛びながら、はらはらして見守っていることしかできない。
谷が終わりに近づいた。前方にはひときわ大きな山が立ちはだかっている。どちらの方向にもよけられそうにない。
「高度上げて! 思いきり!」
夕姫がさけぶ。トマトは力のかぎり、レバーを引いた。オートジャイロはぐうーんと高度を上げてゆく。
「前に何かある!」
オニオンがさけんだ。前を見た知絵ははっとした。山の向こうに三本の白いタワーが立っているのだ。高さは百メートルぐらいありそうだ。
「アレシボ電波天文台!?」
知絵はさけんだ。
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