第42話 俗物
「お前の血を、取り込んだ…?」
アマネは目を伏せる。
「養父を悪く言いたくはないのですが…。残念ながら小物でして。王妃様、つまり私の母に当たる人の妹…私の叔母ですね。結婚したのも、私を引き取って院に入ったのも、小物の俗物らしい権力欲です。」
悪く言いたくはない、と言いつつ辛辣なアマネの言葉にレイは苦笑を抑えきれない。決して嫌いではないのだろう。それでも許せない、という様子だ。
「アムは、王族の血を引いていません。ですが、私の血が入っています。」
「そこだ。どういうことなんだ?」
「簡単な話です。アムが覚えていないほどに本当に幼いころ、アムに輸血として、大量の私の血が入っています。アムとは姉妹ではありませんが、従妹ですからもとより血のつながりがないわけではありません。…本来王の血を引く私の輸血は許されてはいないのですが、様々な事情で、強引に押し切りました。」
本当に簡単な話だ。だからこそ、誰も指摘しなかったともいえる。
「アム自身も覚えていない頃ですから…。姫の記憶が植え付けられた後、姫もわざわざ確かめることもなく、自らの血を宿すものだと誤解したのでしょう。」
「アムは、姫の記憶が植え付けられたのか…。」
アマネは一つ頷いて
「正確なことは、私も知りません。この辺りは、私の推測です。…あなたがたが幼いころつながれていた機械にアムをつないだのです。」
「それで、適応した…と。」
レイは顔をしかめる。
「なぜ、今まで全く適応しなかった姫が、アムを受け入れたのかはわかりません。養父もダメ元で行ったはずです。ですが、ともかく姫はアムの体に宿りました。」
レイはふと声を上げる。
「話を遮って悪いが、どうもオレが相対した”姫”とずいぶん違うんだが、どういうことだ。」
「…おそらくですが、姫が幼き天才だったからでしょう。幼く純粋で、自分の才覚が図抜けていたことにも気づかず狂って死んでいった姫は、妹と出会って、嫉妬と愛しさともどかしさが彼女を再び狂わせたのでは無いでしょうか。」
「ある意味、アムが姫を壊した、とも言えるのか。」
皮肉気にレイが挑発するが、アマネは眉を少し動かしただけで
「そうとも言える、のかもしれませんね。」
と返すにとどめた。
「これが、過去と今までの真実です。…ですが、レイ。これは長い前置きです。本題はここからですわ。レイ。」
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