第33話 腹いせ
「まじかよ…。」
レイの言葉通り、アムたちが通って行ったのと同じ道が開く。
「あいつの言葉の意図はそういうことだったんだろう。…そういうことだ。イズルと、シズルを連れて戻れ。」
傷を癒し終わったレイは淡々と言葉を告げる。
「レイ。」
ルカが、力づくでシズルに刺さった剣を抜き、ティアがもう動くことのないシズルの手当てをする。シズルが死んだことを認めながらも、まるで生きているかのように、大切そうに労わっていた。
「…手ぶらで行く気か?シズルに刺したままで。…持っていけ。」
剣ともう一つ、イズルに渡していたはずの銃まで、ルカの手には握られていた。
「それと…イズルにこんな物騒なもの持たせるんじゃねえ。神の子に人を殺させる気か。」
その表情はまぎれもない怒りだ。
「気づいていたのか…。」
「わかっていただろう。イズルは使わないと。」
「ああ。」
レイは剣を右に差し、銃を左に納めた。
「レイ…。」
疲れた様子で、でも、彼本来の風格を失わないまま、イズルはレイに呼びかけた。
「哀しみの連鎖を断ち切ってくれ。君に頼むのは筋違いなのは承知の上だ。だが、レイにしか頼めない。」
レイは苦々しい顔で、イズルの視線を受け止める。
「約束は出来ねえ…。でも、仰せのままに、神子様。」
ほんの少しのイズルたちへの嫌がらせ。真実の一端を担わされたレイの腹いせでしかない。
「生きて再び会える日を。」
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