第23話 侵攻
レイとイズルは、ミツルの御する車で王都への入り口に乗り付けた。ミツルは自分で言った通り、粗削りではあるが、安定していた。
ミツルの力を借り、降りた二人は、もうイズルとレイではなかった。
≪ショウタイジョウ、オヨビ、ショウメイ、ヲ、テイジ、シテクダサイ≫
その声に従い、姉妹に発行してもらった招待状をかざす。
≪ニンショウ、シマシタ。レンサマ、リコサマ。オタノシミ、クダサイマセ≫
「お兄様。」
「アムたちに発行してもらってよかったね。」
「流石、お姉様ですわ。」
車椅子を押す、レンことイズルを振り返り、リコことレイはものすごく遠回しに、警備に対する嫌味を言う。
「そういうな、リコ。アムたちに感謝だよ。」
イズルは指を口の前で立てて微笑む。
「もちろんですわ。お兄様。」
二人とも元は王都の出でありながら、王都に穏やかな気持ちでいたことはない。到底今も。
「しかし、兄様の言うことは本当でしたね。前に来た時よりずっと王都に入りやすい。」
「ああ、今日はかなりにぎわっている分だけ、他人に注意を払っていないからな。」
言葉をうまく使って二人は会話を続ける。
「お二人!…リコ様、レン様!」
二人の会話を遮るように、物陰から少年の呼ばう声がする。その名でここに訪れることを知るものは少ない。それだけで関係者であることは疑いがない。
「…君は?」
それでもレイが警戒しながら、少年に問いかける。
「初めまして。ロミと申します。エトとイクトの使いで参りました。」
イズルは少年の顔を見つめて
「もしかして、君は…。」
「はい、二人の息子です。説明は長くなります。みながそろうまで、家にいらっしゃってください。正体がばれないように。」
ロミは静かに裏道を誘う。祭りにうかれた場所に身を潜めることは、レイは愚か、イズルにもそう難しいことではない。
「リコ。」
「なんです?」
「珍しいじゃないか。君が初対面の得体のしれない少年についていくことを認めるなんて。」
これはイズルにとって純粋な驚きだった。イズルはロミの存在を信じた。それでも、警戒心の強いレイは、まず抵抗すると思っていたのだ。
「家族、というものは正直怖いですね…。でも、兄様を溺愛する人の息子だと聞いてしまったら、兄様に賭けるしかありません…。ですが、兄様。」
強い瞳でイズルを見つめる。
「もし、彼らが私の邪魔をするというのなら、容赦は致しません…。この意味、兄様ならわかりますね?」
イズルは、少し黙ってから
「ああ、わかってるよ。」
「お二人、こちらでございます。もとより人の少ない地でありますが、くれぐれもご用心ください。みな、夕刻には戻ります。中でしばしご休息ください。」
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