第22話 出陣

「こりゃまた張り込んだな。イルマ。」

イルマがよこした迎えを使い、イルマとミツルが拠点としている地にたどり着く。そこにあったのは、確かにイズルの住処に来るには目立ちすぎる、豪奢な車だ。

「そりゃどーも。金かかってんだから。お前の金だけじゃ足りなかったぞ。」

「ありがたく甘えておこう。」

「だから…返しに来いよ。」

これがミツルとイルマの精一杯の激励なのだろう。二人は連れて行かない。もとよりレイはその気はなかったが、イズルすらもそれを拒んだからだ。二人は正反対で同じ理由で、自分たちだけをまきこむことにしていた。

「あのな。二人とも。イズルはともかくオレは正義の味方じゃない。自分のために、多くの平穏な生活を壊しに行くんだ。誰に石を投げられてもおかしくない…。ここに戻ってくると思うか?」

「それでも。それでもだよ。レイ。」

ミツルはまっすぐにレイを射抜いた。

「それでもここにいてほしいと望むんだ。僕はレイが強くて、自由で誇り高いのは知っている。君の力がこんなとこで腐らせていいものではないことも。それでも。せめて、戻らなかったとしても、元気に生きていることをちゃんと、知らせてほしい。」

レイはミツルのまっすぐな視線に耐えられず、

「わかったわかった。約束はしねえが、頭の隅にはおいておいてやる。それでいいだろ。それはイズルに言ってやれよ。」

ミツルはにこりと笑って

「イズル兄はそんなこととっくにわかってるよ。じゃ、ボクが運転するから。ちょっと待ってて。」

「おいおい…。ミツルで大丈夫か?」

レイが少し揶揄うと、イズルは笑って

「大丈夫だよ。あの子たちは強いよ。」

「行くぞ、イズル。レイ。」

「ミーツール。違う。」

イルマがわざとらしくミツルをたしなめる。ミツルは一度しかめつらを見せてから

「失礼いたしました、リコ様、レン様。そろそろ参りましょう。」

イズルとレイはにこりと笑って

「ありがとう。そろそろ参りましょう、お兄様。」

「ああ。」

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