第19話 策謀

「あとこれ。」

立ち去ろうとしたレイに、イズルが小さな封筒を手渡す。

「これは?」

「ダメ押しだ。」

中を開けると、アムたち姉妹からの祭りへの招待状が入っている。レイが手に入れた通信機は結局使えず、ごまかそうと思っていた矢先だったので、レイも驚きを珍しく隠さない。

「それがあれば、検査も最小限に抑えられる。…リスクは少ないに越したことはないだろ?」

「…どうやって手に入れたんだ?」

「イルマとミツルに手紙を預けただけだよ。」

思わずレイは聞き返すが、イズルは笑って返すだけだ。

「これでアムたちに本当の計画を知られることはないか?」

レイの小さな疑念をぶつける。

「まず大丈夫だが、ばれたところでむしろ手引きがあったほうが楽だ。僕たちを止めることができるとは思えない。それにあのアムという少女はともかく、姉のほうは聡明だ。下手に悟らず、いざとなったら知らぬ存ぜぬで自分と妹を守るだろう。」

「確かに院の手引きはあったほうがいいが…。」

どこか腑に落ちない顔をしながらも、ある意味直情型のレイに比べて、イズルのほうが思慮深いことは理解しているので黙らざるを得ない。

「中にいる同胞たちも、僕が行くと伝えたら、協力してくれるらしいよ。来るな。レイを放っておけと散々言われたけれどね。どうしてもレイとともに行きたいと言ったら渋々認めてくれたよ。」

そう悪戯っぽく笑うイズルにレイは珍しく疲れた表情を浮かべる。

「ほんとお前は…。オレはお前の同胞たちに殺される覚悟までしなきゃなんねえのか?」

「ま、もし僕が死んだらだね。大丈夫。僕だってこうして体は弱いけれど、特化世代だからね。自分の身くらいは守れるよ。」

「よく言うぜ…。」

「自分がこの時代、この生まれで異様に愛されていることを知っている。それが得難きものであることも。ならば、僕はその愛を返さなくてはね。」

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