第18話 罪

レイがイズルの元を訪れた数日後。祭りの数日前にイズルはレイを呼びだした。

「頼まれてたものが準備できたぞ。」

「…聞いていたものより多いんだが。そしてどうしたんだ?」

「ものを手に入れる方法がないわけじゃないことは知っているだろう?イルマとミツルに頼んだだけだよ。」

「それは別にどうでもいい。イルマでもミツルでもなんでも問題はない。あいつらがどんな手を使っていようがな。オレが言いたいのはお前が用意した服でもなく、その車いすだよ。」

大方イルマは体を使ったんだろうし、ミツルはスリをしたんだろう。レイはそれがわからないほど愚かでも優しくもなかった。イズルにその魔性のような力があることもわかっている。イズルは笑って

「カモフラージュと僕も行くため。」

「オレにイズルを守って戦え、というのか?オレはお前を守らねえぞ。」

レイは嘲笑うようにイズルを見る。

「僕は確かに普通の人よりは体が弱いけれど、車いすが必要なほどではないよ。薬もおかげさまで切らさないでいられているしね。」

イズルはレイの笑いに気づかないように答えを返す。

「これは、カモフラージュ用。レイが女の子の格好で車椅子に乗れば、付き人が必要だろう?そんな女性が血塗れの天使だとは誰も想わない。場合によっては、僕とレイが入れ替わることも容易にできる。」

「オレはイズルを連れていくとは一言も言っていない。」

イズルの策案に抵抗するようにレイは文句を言う。

「連れてく気だったろ?僕が必要なはずだ。」

イズルの自信にあふれた言葉に、レイは沈黙で返す。イズルの言うことは事実で、連れていく気のない人にここまで話はしない。ただ守る気がなかったのもまた、事実だ。

レイはイズルの用意した黒髪のウィッグと手の込んだ仕掛けのされた服を手に取りながら目をそらす。

「レイ、僕は君を一人で行かせる気はない。」

「中にいるあんたの同胞や、ここにいるガキたちが哀しむぜ?」

悔しまぎれにレイがイズルに毒を吐く。イズルは少し寂しそうな色をまとわせて

「エト達や、アル達には怒られるかもな…。それでもいいよ。僕は君とともに行く。」

「罪づくりなやつだよな、お前は。」

「どうやら、僕の血に愛される力が刻まれているようだね。」

イズルもレイの皮肉には慣れたもので、受け流してしまう。レイはイズルの苦悩も、優しさも、残酷さも知っている。

イズルは誰よりも純粋に人間なのだ。

「決行の日までに、準備は万全にしておけよ。」

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