第17話 欲望
愛してる。
狂おしいほどに。
それなのになぜ私の隣にあの子はいないのだろう。
言葉通り二度の死を乗り越えてしまった私は、彼らと違って完全な記憶を持ってしまった。
体の異常な修復とともに、修復される必要も、されるはずもなかった記憶までが修復されてしまったのだろう。それがわかってしまったら、彼らの隣に素知らぬ顔でいることはできなかった。
私は一人で違う道を選んだ。最初は、彼らを守るため、自らが盾になるために。2回目は、あの子を手に入れるために。
これを裏切りと呼びたければ呼ぶがいい。
彼らにはわからないはずだ。二つの過去に苛まれる苦しみと哀しみがもたらす痛みを。
身を切り裂くでは足りない痛みを。
彼女が救いでないのは、百も承知。それでも、あの子を手に入れるためには、彼女に従うしか私には選べなかった。
それに、ほんの少しだけ、彼女の器である娘に同情したのだ。言ってしまえば、僕とよく似た境遇に置かれた少女に。
私は、あの子を再び隣で愛でることができるのならば、かつての同胞たちに刃を向けることをいとわない。そう彼女と約束した。
彼女は、レイを殺すことを要求した。
私は、イズルをくれるのなら、それを飲もうといった。イズルを傷つけることは許さないと。
彼女は許した。
レイは一度私を殺した。それでも私は蘇ってしまった。
レイに殺せない私を、他の誰が殺せるだろうか。
叶うのならば、イズルの隣で、イズルとともに死にたい。
それが叶うのならば、悪魔の姫であろうと忠誠を誓おう。
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