第15話 下書き

「後の問題は、道具の調達か…。表から入るならそれなりの礼儀が必要だな。」

「用意するものは、黒髪と…お前男の格好で行くの?それとも女の格好?」

イズルはふと思った疑問をレイに投げかける。

「どっちも一長一短なんだ。普段があれだからどっちで行ってもまずわからないと思うんだが。」

「まあ、女の格好のほうが無難なことは確かだな。彼女たちの知り合いとして入るのならなおさら。…お前の美貌は圧倒的過ぎる。」

レイは諦めたように

「そうやって作られたからな。イズルたちとは違って、一から。」

「本当に非人道的だ。まあ、死体から再び作られた僕たちのいえた話ではないが。」

レイはあざ笑うように

「人道なんて興味はない。オレは、自分の意志で死を選べる存在だ。…オレを殺せるとしたら、オレと同じ能力を持つものが生まれたとき。だから、オレは他のやつを殺して、ここに来たんだ。たとえ軍隊だってオレを殺せやしない。だから、そのために王都に行くんだ。」

「自分を殺せる存在を消すために?」

イズルは呆れたように言う。

「唯一オレに与えられた自由が、自ら選べる死なのさ。オレの唯一絶対だ。それだけは何者にも犯させない。」

イズルもレイも、今回の王都襲撃で、レイが死ぬとは欠片も思っていない。

それが事実だからだ。

「…調達は僕がしておくよ。チビ達に手紙を届けさせる。一両日中には準備できるはずだ。」

「恩にきるよ、イズル。」

レイは寂しげな微笑みを浮かべて、去っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る