第3話 暗い闇の道中で
どこを通ってるのかアムにはさっぱりわからない町の中を、レイはわき目も振らずに歩いていく。
「この町には…大人はいないの?」
それほど多いわけでもない人口、それでも出逢う人出逢う人みな子供ばかりの街を見て思わず疑問を投げかける。比較的機嫌がいいのか饒舌なレイは答えを返す。
「姫さん。ここは王都と違って次の日を生きるのもぎりぎりなのさ。大人になるまでにほとんどが死ぬ。大人になって他人のことを考えたやつも死ぬ。たくさん食わなきゃならないやつも死ぬ。ただそれだけの話さ。ここは大人じゃ生きていられない。」
「ならなぜ、子供は多いの?」
レイは可愛らしい笑みを浮かべながら
「この町で娯楽と言ったら体を重ねることくらいしかない。でも子を宿したからと言って堕とす方法もない。ほとんどのガキは生まれる前に死ぬが、ここでその年まで生きたやつの子供だ。母親を食い破って生まれ落ちるやつも相当いるってだけの話さ。それでも育てられやしないから、自力で生きられるやつしか年をとれない。その連鎖さ。」
「…レイはいくつなの?」
「さあ?姫さんはおいくつで?」
「17よ。」
「じゃあ、オレもそんなもんじゃねえか?親もわからねえのに、年齢も誕生日も知れるはずがないだろう?」
レイは何かを隠しているような顔で何事もなかったように告げる。
「悪いことを聞いたわね。」
アムは少ししゅんとするが、レイは気にも止めていない様子で答える。
「オレは生まれたことは恨んでるが、この姿に生まれたことはオレの悪運の強さだと思ってる。この姿だから王都に行っても何とか生きていられるからな。」
「さっきから聞きたかったの…。なぜあそこに住んでいるのに、王都への入国ができるの…?命を狙われるっていったい…?」
「…その話をするのが面倒だから、会話してるのに、そこに戻すのか、姫さんは。」
一つレイはため息をつく。
「その答えは、あんたが王都に戻ってから姉さんに聞くがいい。オレの容姿と名を告げれば、わかるはずだ。」
彼女は驚いた様子で
「私、姉様の話しました?」
「同じピアスをしてるからな。」
アムはピアスを抑える。それこそがまぎれもない身分証明だった。
「ミツルには価値がわからない上に、面倒だから取らなかったみたいだがな。」
「…あなた何者なの?」
疑わし気な顔をアムは向ける。
「少なくとも姫さんよりは、現実を知ってる。…あんたがあの町に来た理由も。それがわかるからオレは姫さんを王都に連れ帰る気になった。お前さんに恩を売るためにな。」
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