第2話 真実と正義

「あのお嬢さん意外と根性があるみたいだな。」

「みたいだな。ついてきたもんな。つーかミツル。なんでお前も成り行きとはいえど、オレんちに来てんじゃねーよ。邪魔だ。」

二人は本気ではなかった。それでも、温室育ちの娘にはついてこれるようなものでなかったはずだ。

「…ついてきたわよ。これでいいんでしょう。」

娘は、小さな家に入る二人を追いかけながら息も切れ切れなのに噛みついてくる。

「お疲れさん。どーぞ。」

彼女の前に、質素な食事がおかれる。彼女は警戒して手に取らない。

「そうしてぼけっとしてるとこうやって目の前でかっさらわれることもある。」

外から何やらケモノが飛び込んできて目の前に置かれた食事をかっさらっていく。そしてそのケモノはすぐに倒れ伏す。

「でも、ここで人の出すものを素直に受け取らないのも正解。」

「…何が言いたいの?」

彼女は怪訝そうな顔で彼らを見ている。

「別に?嘘も真も入り混じってるってだけの話だ。」

「早く、いるべき場所に戻れば?あんたにこの町にとどまられると、食い扶持が減るんだよね。」

「だから帰るって何度も言ってるじゃない!だから早く返して。」

そういって彼女は銃を懐から抜き出す。彼らは慌てた様子も見せない。

「前々から思っちゃいたが、ここは王都の人間にとっては国外らしい。社会勉強には遠くに来過ぎだな、姫さん。」

皮肉気に美しい顔をゆがめて彼は言う。

「心配しなくても送ってやるよ…。オレもちょうど王都に用があったしな。…姫さん、ここじゃ打てない銃を振り回す奴は一番弱い。」

「人間には人の命を簡単に奪える奴と、良識に縛られて奪われるやつがいる。姫さん。大体オレが銃なんて高級で危険なもの盗んでないと思ったか?」

彼女は慌てて引き金を引くが、弾は出ない。

「いいよな、レイは。王都に行けば、何でも手に入るんだから。何を好んでこんな辺境の地に住んでんだか。」

「オレは王都に、命を狙われに行くんだぜ?あんな場所に住みたくねえよ。こっちのほうがまだ気が楽だ。」

「それでも毎回生きて帰ってくるんだから。」

「どういうこと…?」

彼女はものすごく驚いた顔を見せる。

「温室育ちのお嬢さんには刺激が強いだろう。だが、おかしなことに客層もそんなお嬢さんお坊ちゃんなんだよな。自分たちにないものを高みの見物っていい趣味してるぜ。」

そういってレイは来ていた服のフードをかぶる。

「姫さんの生きてる王都のほうじゃ、銀髪は珍しくないかもしれないが、この町じゃオレくらいだから目立つ…。あいにくオレは姫さんをかばっていくつもりはないから、自分の身は自分で守れ。…ミツル、居座るなよ?」

彼女はムスッとした様子ながら、床に無造作に置かれていたバンダナを頭に巻き、髪を収める。

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