第2話装備はただの棒切れと何かステッキ

あれから16年が過ぎた。メイ・フィディカルは16になり、幼馴染みであるマルク・テンペスタは18となった。


マルク「メイ、こっち!こっち!」

前を走るマルクがメイを呼んだ。

メイ「マルク、少し落ち着いてよ」

2人は村長の家を目指し走っていた。

マルク「何いってんだよ!今日は村長からプレゼントがあるっていってたじゃねぇか!」

プレゼントという単語を聞いたマルクは興奮ぎみでそういった。

メイ「全く、たまにどっちが年上か聞きたくなるわ」

ため息をついたメイが言った。そうメイが言うようにもう一度いうが、メイが16,マルクが18なのだ。

マルク「何かいったか?」

しかし、興奮しているマルクには聞こえていなかったようだ。

メイ「別にー」

仕方なしについていくメイ。

〜村長の家〜

マルク「村長ー!」バンッ

マルクが勢いよく扉を開くと中には立っているのもやっとの様子の村長がいた。

村長「お…おぉ、マルク…メイ…よくきたなぁ。い…今…お茶を…」プルプル

そう言って、お茶を準備しようとしていた村長に対し、

メイ「村長…1日で一体何が…」

メイは昨日、元気に走り回っていた村長を思い出した。

村長「いろいろなぁ、はっはっはっ…ゴホッゴホッゴハァ!」バタン

村長はそういうやいなや血を吐いて倒れた。

メイ・マルク「そんちょーーーーー!!」

村長を看病していたメイはあることに気がついた。

メイ「もう、しっかりしてくださいよ。と言うか魚の骨ごときで…」

そう、村長が血を吐いた原因は昨夜、村長が夕食に食べたであろう魚の小骨が喉に刺さっていたのだ。

マルク「そんなことよりー、プレゼントってなんだよ!?」

だが、そんなことは全く興味のないマルクがいった。

村長「おぉ、そうじゃった、そうじゃった。主らもそろそろ、魔王を倒せる年になったことじゃし、旅にでんか?」

小骨がとれ、元気になった村長が2人に旅の提案をした。

メイ「へー魔王を………ん!?魔王を倒せる年って魔王結構低ランクレベルで倒せちゃうの!?て言うか、魔王いたの!?」

そう、普通の物語なら魔王とはラスボスのこと。そんなラスボスを一定の年齢になれば倒せるなんて、メイは聞いたことがなかった。

マルク「何いってんだよ、メイ。どの村の奴等も15過ぎたら魔王の1人や2人倒せねぇと大人にはなれないぜ☆」キラーン

だが、これは普通の物語ではない。魔王なんて低ランク中の低ランク。つまり、他の物語で言わせればスライム位のレベルなのだ。

メイ「何こいつ、殴っていい?殴っていいよね。て言うかなんでキメ顔なんだよ」

そんな、説明をキメ顔でしたマルクに対し少しイラつきを覚えた、メイだった。

村長「これ、喧嘩は止めぬか。全くお主らは…(ハァで、どうするんじゃ?」

ため息をつき再び村長が2人に問う。

マルク「もちろん、行くにきまってんだろ!俺は勇者になるんだ!」

小さい頃から将来は、勇者になるのだと語っていた、マルク。当然行く気満々だ。

メイ「めんどくさいからイヤだ」

しかし、めんどくさがりのメイ。即答で断った。

村長「おぉ、そうかいってくれるか!いやー、ここ最近はサース村から旅に出るものがおらなんだからのぅ、よかった、よかった!」

だが、そんなことは村長には通用しない。まるで何も聞こえなかったかのように話を進めた。

メイ「ねぇ、聞こえてる?イヤだっていったよね」

なおも諦めないメイだが

村長「では、マルクよ。主が選ぶのはこの《滅びの剣》《祝福の剣》《ただの棒切れ》どれを選ぶ?」

スルーだ。そして、マルクに問う。この3つのなかで旅に持っていくものをどれにするか。

マルク「うーん………《ただの棒切れ》だ!!」

その問に対しマルクが答えた。

メイ「えぇ!そこでそれチョイス!?なんで!?」

それもそのはず。この中で1番弱そうな武器?を選んだのだから。

マルク「だって、はじめから強かったら楽しくねぇだろ!勇者になるんだ、これくらいじゃねぇとおもしろくねぇだろ!」

しかし、性格は勇者気質のマルク。下から上へのしあがるのを楽しみにしているようだ。

メイ「全く」

これには、16年一緒にいるメイもあきれた。

村長「はっはっはっ!マルクらしいのぅ。さて、メイ。お主は《ハートのステッキ》《白雪のステッキ》《何かステッキ》どれがいい?」

そして、今度はメイに問う

マルク「《何かステッキ》!」

それに対しマルクが答えた。

メイ「なんであんたが答えるのよ。嫌よ、そんなよくわからないもの」

勝手に答えられた上になんだかよくわからないものを選ばれたメイはたまったものではない。即座に拒否したが、

村長「よし、《何かステッキ》じゃな!」

どんどん話は進んでいく。

メイ「ちょっ!待ってください、村長!!私は!」

それに反対しようとすると、

マルク「はい、これ!よし、これで勇者になってやる!!行くぞ、メイ!」

《何かステッキ》を無理やり持たされ引きずられるようにつれていけれた。 メイ「えっ、ちょっ、あぁぁぁあぁぁあぁ!!」

だが、そんな叫びはマルクには通じなかった。

村長「かんばるのじゃぞ、ヒーロー、ヒロインよ」

そう、意味ありげに村長が呟いたのも知らずに物語はスタートラインに向かった。

〜家にて〜

メイ「という事で、旅に出ることになりました 」

家に着いた メイはしぶしぶ両親にこの事を話した。自分でいうのもあれだがきっと、娘を弱愛している父のことだ、止めてるれると信じていた。

ニーナ「まぁ、本当に?なら、荷物をまとめなくちゃ」

しかし、母であるニーナは大賛成。すぐに荷物の準備に入った。

アルト「そうだよなぁ、メイももうそんなことより年だもんな」

そして、期待していた父アルトは何故か納得し始めたのだ。

ニーナ「メイ、はいこれ、荷物」

仕事が早いのがニーナの自慢だ。直ぐに荷物をまとめメイに渡した。

メイ「えっ、はやっ!と言うかアッサリ認めた!!」

2人の反応に当然の如く驚いたメイ

アルト「俺だって…俺だって行ってほしくないよぉぉぉ!でも、メイの、村のためなんだぁぁぁぁぁ!わかってくれ!」

やはり、娘を弱愛しているマルク。泣きながらメイに抱き付いた。

メイ「ハァ、分かったよ」

それをよけ、もうこれは無理だと悟ったメイはそう答えた。

ニーナ「マルク君といくんでしょ?気を付けてね。迷惑掛けたらダメよ?」

ニーナはそう言ってマルクの両親に挨拶に行く準備を始めた。

マルク「メイ!!準備できたか!?」

大声を出してマルクがメイの家に顔を出した。

アルト「マルクぅぅぅぅぅ!!うちの娘に怪我させてみろ、ただじゃおかないからなぁぁ!?」

そう言ってマルクをがくがくと揺らすアルト

マルク「アァァァアルトさんんんんん、わかってぇぇますよぉぉぉぉ」

揺られ過ぎたのか、もう何を言っているのかわからない。

マルク母「メイちゃん、うちの馬鹿が迷惑かけるかもしれないけどよろしくね」

そう言って訪ねてきたのはマルクの母であるスピアだ。

ニーナ「スピア!今、挨拶しに行こうと思ってたの」

そう言って両手を合わせたニーナはスピアに駆け寄った。

ニーナ「うちのメイも迷惑かけるかもしれないけど」

スピア「いいのよ!マルクにならいくらでもかけてやれば!」

そう言って話が盛り上がる母2人を尻目にマルクを揺すりまくっていたアルトが

アルト「なら職業を決めにいかないと行けないな!」

と言った。その言葉にマルクが

マルク「はい!ですからここから近いハーバード村に行こうと思っています!」

と答えた。ハーバード村とはこの近くの村の中で一番大きく発展した村のことだ。

メイ「そうと決まれば早くいこう。」

荷物とステッキを持ったメイがマルクをせかした。

マルク「あぁ、そうだな!」

メイ・マルク「それじゃあ、行ってきます!!」


そう言って、メイの家を飛び出した2人。それを村全体が祝福したのだった。

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私がヒロインなんて認めない 神楽 @0603iitaka

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