付喪神はみる
金輪斎 鉄蔵
1.モップ
暗い廊下には、古新聞古雑誌、鎖と紐、積まれたタイヤとペンキ
左右から人の声がする。
すでに四、五十冊の本を拾ったというのにまだ拾い続け、一冊拾うごとに一冊落としつつ進む女と、まったく同じ行為を逆から続けてきた男が鉢合わせする。一冊の本に二つの手が伸び、二人はお互いを見る。二人とも本から手を離そうとしない。一旦生まれた欲望を静めることができない。しかたなくモップで彼らを制して、本に火をつける。燃えるページを読もうと二人は努力するが、やがて炎の速度に負けて同時に手を離す。道しるべのように続く本の列が理想的な導火線となるだろう。これでモップの役目は終わりだ。
付喪神はみる 金輪斎 鉄蔵 @arutanga
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