第8話

 マイペースを守りながら、わたしは順調に距離を重ねる。


小学校のクラブは読書クラブ、中学は化学部、高校は帰宅部と、徹底して運動部と縁を結ばなかったわたしが、ジョギングをするに当たってバイブルとして愛読・実践してきたのは、プロのランニングコーチが書いた、「走る体をつくる」、という、ストレッチと体幹トレーニングの本。立ち方、歩き方、走り方ということを基本から見直す、わたしにとって画期的な本。これを読むと、運動が苦手なわたしもとても希望が持てた。逆に、この本を読んだ後、甲子園へあと一歩だった野球部のエースの練習風景を見かけたとき、


「あ。あの子、そもそも立ち方がダメ。走るフォームも、バラバラ。きちんとすればもっと速い球が投げられるのに」


と、偉そうな評論を心の中でしたりして。


その偉そうなことを言っていたわたしは、今、本の内容とそれを毎日繰り返し体で覚えこんできたことをおさらいしながら走っている。間違ってなかった、と思う。20kmを過ぎても、膝や足首に痛みは全くない。ゆっくりのペースではあるけれども、ストライドの度に、前への推進力がきちんと働いていることが実感できる。


けれども、フルマラソンはわたしの想像をはるかに超える壮大なものだと、やがて思い知らされた。

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