第2話

 わたしは、通常の神社をお参りするコースの他に、お気に入りのジョギングコースがある。神様がお通りになるという意味の名の川。その土手にずっと続くランニング・サイクリングコース。ただ単にコースとして整備されてるから、っていう理由だけじゃない。


この土手を降りたところに、わたしが生まれた病院があるのだ。市で2番目に大きな総合病院。そこで、お母さんはわたしを産んだ。でも、そこは、おばあちゃんが亡くなった病院でもある。


病院を少し通り過ぎて下流に走った辺りで、沈んでゆく夕日と昇ってくる月がとてもきれいなアングルで見られるポイントがある。走りを緩めてわたしは夕日と月を交互に見つめる。あるいは、ぼうっ、と夕日を眺めながら、時折背後を振り返ってお月さまを眺める。


そして、夕日の光に映えている病院を観、こんな風に思うのだ。


「赤ちゃんを産んだばかりの希望に満ちた母親と、残った命に限られた時間しかないような患者が見る夕陽とでは、見え方も、感じ方も、違うのかな」

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