第3話
走っていると色々な発見がある。
神様がお通りになるという意味の名を持つ川に架かった大橋を走っているとき。学校から帰ってきて夜走っていたときのこと。ふっ、と何気なく顔を上げて空を見ると、銀製のお盆のような素晴らしいお月様が、あかあかと光を注いでくださっている。普段夜学校から補習なんかを終えて帰る時には見えなくて、お月様はどこにいるのだろう、なんて思っていたけれども、そうか、ビルなんかに隠れて見えなかっただけで、大橋の上からはこんなに美しく見えるんだと気づいた。
「こんばんは」
こうして夜走るときに、声をかけてくれる若い女性のランナーがいる。ひざ下までのランニング用のタイツを履いて走っているその女の人のふくらはぎを見ると、まさしくカモシカのような足と呼べるような、アスリートの足だ。一度だけ、赤信号で止まった時に、彼女と並んで信号を待ったことがあった。わたしは思い切って訊いてみた。
「あの、フルマラソンとかやってらっしゃるんですか?」
彼女はにやっと笑った。
「わたしは、トレイルランニングの方なんだよね」そう言って、わが県自慢の3000M級の連峰がある筈の方を指さした。
「頂上まで登ることもあるよ」
びっくりだ。
以前話したけれども、朝走ることも多い。特に土日は早い。平日はおばあちゃんが家で一番早起きなのだけれども、土日はわたしが走りに出ようとするときにちょうどおばあちゃんが起きてくる。
「おはよう」
「気を付けて行っておいで」
土日はわたしが朝ごはんを作る当番なので、準備に間に合うように逆算して特に早く出発するのだ。
わたしは、走る度に、生まれ変わる。そんな気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます