第4話 それを愛と呼ぶとしよう 2

「純喫茶 アラン?」


友達に促されるままにこの店に入った。日曜の午後、補講の帰りにちょっと寄ってみようよ、と一緒にやって来た帰宅道途中にある高校の文化祭。高3のこの時期、ほんのささやかな息抜きかな、とちょっと心軽くなる。


入った店は喫茶店、なのだろうが、何々カフェ、という演出は全くなく、かと言って玄人の店という雰囲気でもなく、あくまでも文化祭の模擬店レベルの店だ。けれども、制服のYシャツ・ブラウスに蝶ネクタイを着けてウェイター・ウェイトレスとして動いている男子・女子たちはとても和やかで楽しそうだ。ああ、こんな高校もあるんだな、とちょっと羨ましくなった。


ブレンドが運ばれてきたテーブルで友達と来週の模試の話をしていると、一瞬、どきっ、とした。


エレファントカシマシの「今宵の月のように」が流れてきたのだ。BOSEのスピーカーから程よい音量で流れてくる宮本の歌声。友達とのやり取りが上の空になる。


「どうしたの?」


「え、別に。どうもしないよ」


わたしは学校の誰にもエレファントカシマシが好きと話したことはない。別に隠す必要も何もないのだけれど、なぜか話すタイミングを逃したままずっときてしまったのだ。


ドキドキしたままコーヒーを飲んでいると今度は「風に吹かれて」が流れる。これも大好きな曲だ。切なく、心に染み入る歌とメロディー。


3曲目も宮本の歌声だったけれども、知らない曲だった。その曲が終わると今度はバンド名に同じ'エレファント'がつくけれども、ミッシェルガン・エレファントのゲットアップ・ルーシーという曲だった。どうやらエレファントカシマシのコーナーは終わったらしい。


会計を済ませると、友達はそのまま教室から廊下に出ようとしたが、わたしはどうしてもその場を離れることができず、友達に「ちょっと待って」と言ってしまった。


そして、レジに立つ女子生徒に話しかける。


「あの、さっきお店の中で流れていた曲の名前が知りたいんですけど」

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