第3話 それを愛と呼ぶとしよう 1

 高校の文化祭、というものは自分にとってあまり縁の無いもののはずだった。けれどもクラスで模擬店を出すことになり、色々な案が出たのだけれども、クラス会で発言を求められた僕は、なんとはなしに「純喫茶でも」と言ってしまった。「純喫茶って何?」と僕の時代錯誤な発言に割と皆まともに付き合ってくれて、いわゆるカフェと呼ばれる類の店よりもインパクトがあるという話になり、「純喫茶 アラン」という店を出すこととなった。そこまで本格的なコーヒーは出せないけれども、メニュー少なく、とりあえずはドリップしたコーヒーを出し、雰囲気だけは昔ながらの喫茶店ぽくしようという話になった。


不用意に発言してしまったせいもあり、とりあえず店の「マスター」を演じる数名のローテーションの中に僕も組み入れられてしまった。ただ、楽しみはある。純喫茶と言えば店内で流れる音楽は有線放送というのが王道だけれども、そうもいかないので、クラス全員が自分の好きな曲を数曲選んでかけられる、ということとなった。もちろん、店の雰囲気をぶち壊さないように、各人の見識ある選曲が言い渡された。


僕が選んだ3曲はすべてエレファントカシマシ。ただし、優しい曲ばかりにした。


1 今宵の月のように


2 風に吹かれて


3 それを愛と呼ぶとしよう


日曜、文化祭最終日の午後遅い時間。僕がマスターのローテンションだ。これに合わせてこの3曲がもうそろそろ流れてくる時間帯となった。自分も楽しいし、押しつけかもしれないけれども、店内の誰かが、「これ、いい曲だ」と思ってくれたら、なんだか自分の人生も肯定されるような気がする。

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