第五章

第七十一話 秘密と真実!

 いやー、飲んだ飲んだ!

 昼になりガンガンと痛む頭で、作戦会議本部に向かう。

 中にはすでに四天王の三人とハーマイアが集まっていた。


「ガストも着たことですし、始めましょうか」


 フローネの合図で作戦会議本部の空気が変わる。


「まずはオトラシオが、封印されるまでの情報を聞きましょう」

「私が四聖から知らされたのは、魔王様はいないってことだよ。私が魔王城に戻った時には、すでに四聖は魔王様の部屋を訪れていた。初めは魔王様が倒されてしまったのかと思ったけど、四聖に言われたの、魔王はどこだって」


 俺が魔王様の部屋に行った時も魔王様はいなかったが、一年前にはすでにいなかったってことなのか?

 どういうことですか魔王様?

 残留思念で見たオトラシオが困惑していたのはそれが原因かー。


「一年前にいなかったって……じゃあ魔王様はどこにいるっていうの。それに魔王様がいなかったら、私達は何のために戦っているのよ」

「落ち着いてください、コルペリアル。今は情報を集めるのが先です」


 謎が多いなー、魔王様。


「ということは、オトラシオも魔王様にお会いしたことはないんだな?」

「うん、魔王様にお会いできたのはアズガント様だけだよ」


 となると、やっぱり俺達の目的は一つしかない。

 アズガント様のメッセージを探し出すことだ。


「オトラシオもアズガント様のメッセージは見たのか?」

「……うん」

「それなら話は早いな。これから俺達はアズガント様のメッセージを探しに行く」


 これからの目的を聞いて、オトラシオは黙って頷いた。

 どんな秘密と真実が隠されているのか、俺達は知らないといけない。


「問題はどこにあるか、よね」

「フローネが封印されていた街にあるんじゃないのか」

「私はアズガント様のお言葉を見つける前に、封印されてしまいましたから発見までは至っていません」

「他に手がかりはないんだ。まずはあの神殿を調べてみよう」


 俺の意見に全員が頷く。


「部下達にはまだ黙っておきましょう。皆、混乱してしまいますから」


 俺達は部下に秘密で、この作戦を決行することになった。

 アズガント様のメッセージ、必ず見つけてみせるぞ。


 準備のために一度解散し、俺は部下達の元へ向かう。

 ポッコに四天王は出かけるとだけ伝える。

 少し申し訳ない気もするが、これも皆のためだ。


 準備を済ませた俺達は、再び集まりハーマイアを連れて転送魔法を使った。

 街の郊外に着くと全員フードを深く被る。

 うん、すごく怪しいな俺達!


「それじゃあ、行こうか」


 五人人でこそこそと移動していく。

 フローネを救出した際に、街を守る兵士も連れて帰ったが、新しい兵士が配備されていた。

 バレると厄介なので、俺達は迂回をして兵士が少ない道を選んで進んだ。


「アズガント様のお言葉が残されているのは、やっぱりフローネが封印されていた石像かしら?」

「他にそれらしいものがなかったからなー」


 あの石像には結界も張られていたし。

 フローネの封印以外の何かがあってもおかしくはない。

 神殿へ続く階段へ到着する。

 階段に誰もいないことを確認してから、俺達は階段を駆け上がった。


 中に入ると多くの人間達がいる。

 彼等を刺激しないように、できるだけ密やかに奥へと進んだ。

 やがて、フローネが封印されていた石像の前まで、来ることができた。


 俺は手を伸ばしながら近づいて行く。

 前に結界が張られていた場所を通過する。

 どうやらあの結界は、フローネの封印のためだけに使われていたようだ。


 俺達は石像に近づいて行く。

 手をかざして魔力を流しながら調べる。

 どこにあるんだろう。


 正面にも側面にも何もなかった。

 後ろに回ってみると、フローネの名前が古代文字で刻まれている。


 もしかしてここにはないのだろうか?


「石像には何もないみたいだなー」

「他の場所も調べてみましょう」


 アズガント様の部屋の仕掛けと同じように、何かに反射して映るのかな?

 何か光りを発しそうな物を探す。

 石像の後ろには燭台くらいしかないなー。


 三つある燭台を一つずつ試していく。

 これもない、こっちもない。

 やっぱり違うのかなー。


 三本目、一番の奥の燭台に触れた時、違う感触があった。

 燭台の炎が揺らぎ、三本の燭台の炎が石像の台座に向かって飛んだ。


「きゃっ! なになに?」

「これは……!」


 オトラシオとフローネが驚く。

 石像の台座を見ると、アズガント様の部屋の時と同じように、文字が浮かび上がっていた。


「見つけた!」


 俺達は石像の周りに集まり、台座に浮かび上がった文字を読んだ。


 ――ここに記すのは、私が部下達に隠していた秘密。それは魔王様に関してだ。気付いている者もいるだろうが、魔王様はもうこの世に存在しない――。


 え、どういうこと?

 確かに魔王様の部屋にはいなかったけど、存在しない……の?


 ――私が人間達との戦いが始まる数年前に、魔王様はこの世を去っている。魔王様がおられぬ以上、もう魔族は生まれぬ。我々には滅びる運命なのだ――。


 え……俺達魔族は滅びる運命……?

 言葉が出てこなかった。

 俺は皆の様子を伺う。

 オトラシオも、フローネも、コルペリアルも、真っ青になっていた。

 残りの言葉を読んでみよう。


 ――魔王様は最後にひとつの光を生み出した。名をハーマイアという――。


 俺達は連れてきたハーマイアに視線を注いだ。

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