第十一話 不知火先輩の弟分

 虚無部の活動内容はその後も判然としなかった。不知火先輩が謎の装置を持ってきて謎の行動を取ったり、禅問答のような質問をしてくることが多々あり、それがメインなのかもしれなかった。基本的に先輩以外で出席率が高いメンバーは拝と雨引で、蛍宮もそこそこ顔を出していた。

 雨引は副部長というかマネージャー、部室の管理者のような立場で、よく「物が多すぎる」と文句を言いながら部室を片付けていた。拝は読書をしていることが多く、そうしながら不知火先輩や他の部員に茶々を入れていた。先輩は彼にしばしば激昂していたが、今後の部長候補であると口にしたこともあった。

 ある日の放課後、同じクラスの男子生徒二人が鶫に対して「知らなかったんだけど鷹無さんって虚無部だったんだな」と話しかけてきた。

「ああ、そうです。君たちも?」

「そうなのよ。俺は秋葉。彼は竜胆」

 秋葉は爽やかな雰囲気で良い匂いがしたが、猫背で常に眠そうな目をしていた。竜胆は顔立ちが中性的で髪が長いので、男子の制服を着ていなかったら女子生徒のように見えたかも知れなかった。

「真昼姉さんがうちのクラスの誰かを、強引に引っ張って来たって話は聞いたけど、鷹無さんだったんだね」

「真昼姉さん? 秋葉君って不知火先輩の親戚か何かですか?」

「いや、でも幼馴染なのよ、俺。まあ姉さんが出現したのはたぶん最近だけど、それ以前の記憶もあるっていうか、まあ分かるでしょ?」

「ええ」

「今日も部室行くんでしょ、俺らも一緒に行くよ。来るでしょ、竜胆」

「いや」彼は即答した。「やりたいゲームがあるから帰るぜ」

「えー、また?」秋葉は難色を示した。「ゲームは明日でもできるっしょ」

「いいや、今日しかできねえよ」竜胆は断言した。

「何で? オンラインのゲーム? 何かイベントあるの?」

「ないけど」力強く竜胆は言う、「今日という日は今日しかねえ。無駄に過ごすとしても、それすら今日にしかできねえんだ。僕はそういう日々に対し、悔いを残すことだけは……」

「ああ、それでいいよ。分かったよ。お前がそう決めたのなら」

 秋葉が折れると竜胆は即座に下校した。

「彼は信念がありますね」鶫は言った。

「うん、彼はぶれない。ある種真昼姉さんと同じく、何かを持っている。だから姉さんに勧誘されたんだ」

「何かって?」

 質問に対し秋葉は、言わずもがな、といった口調で、

「虚無だよ。断固たる虚無。虚無人じゃないけど、赫奕たる退廃があいつを動かしてるわけよ」

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