第9話「地の魔法で基礎工事!」
翌日……
城壁をエモシオンの石工軍団に仕上げをして貰う傍ら、
俺達はオベール様夫妻立ち合いの下、今度はエモシオンの街壁の基礎部分となる、岩壁を作り上げた。
一時、城壁の監督を中断して貰い、石工の親方も立ち合い、岩壁が出来たのを確認した。
規模は城壁よりも数倍以上大きくなる。
だが、城壁のスケールアップバージョンという趣きなので、
特に支障はないという事で……
オベール家城壁の仕上げ工事が終わり次第、エモシオンの街壁の仕上げ工事にも取り掛かって貰う事となった。
街壁の基礎となる岩壁生成を見届けたオベール様夫妻からは……
「工事はこれで完了、バッチリ」とばかりに、
『公衆浴場――銭湯』の完成も「大至急でやって欲しい」と熱望された。
しかし、物事には順序がある。
地の魔法で生成した岩壁を仕上げだけする防壁とは全く違い、
銭湯の建築にはいろいろ段取りが必要なのである。
具体的に言えば、人手、時間、そして技術を要する。
現代日本人の記憶を持つクーガーとサキにも協力して貰うが……
前世の記憶を頼りに造るから、トライアルアンドエラー、手探りでじっくり進む事となる。
実際の作業は、王都から移住して来たこの世界の公衆浴場を手掛けた職人さんへ、
「現場監督を頼もう」と思っている。
ちなみに建設資金は、「結構かかっても構わない、任せろ」とオベール様夫妻から言われているが、これも全くの未知数。
それゆえエモシオンの銭湯に関しては、まずボヌール村に建設。
完成したら、オベール様夫妻に確認して貰った上で、着工した方が賢明なのだ。
こうして……
エモシオンの防壁関係に目途がついたので……
俺達はカルメンへ後を託し、転移魔法でボヌール村へ帰還した。
こちらもエモシオン同様、先に防護柵の基礎部分となる岩壁を生成しておくのだ。
こうなると、次は休む間もなく、ボヌール村の防護壁の工事である。
やり方はこれまでと全く同じ。
基礎の岩壁を生成しておき、後はエモシオンの石工さんが、あちらの工事を終えたら来て貰う。
さすがに、石工さん達に対して、おおっぴらに転移魔法を使う事は出来ない。
だから、魔法鳩便で村へ「エモシオンの工事完了、出発OK」の連絡が来たら、
馬車で迎えに行く。
帰りもエモシオンまで、馬車を使い無事に送り届ける。
そういう段取りとなる。
石工さんが来るまで、こっちは進められるところまで進めておく事に。
という事で、早速スフェール様がボヌール村へご来訪となる。
「ボヌール村付近の街道に〇〇日に到着するという、連絡を受けた。だから迎えに行く」という、もっともらしい設定。
俺が馬車で出かけ、スフェール様をお連れするという形。
ボヌール村におけるスフェール役は交代して、今度はロヴィーサが務める。
カルメンの役……『立ち会い』をするのは当然、村長のリゼットであり、
オベール男爵家宰相で前村長の俺も立ち会う事となる。
ちなみにサキも立ち合い、にやにやしながら見守っていた。
事前に村の防護柵を新装すると村民には周知してある。
そして、当初は従来の外柵より、『300m先』の予定だったが……
オベール様夫妻より、『人口も倍になったし、大は小を兼ねるだろう?』
などと言われ、結局、3倍以上の『1km先』とした。
その分、村の宅地も農地も増えるという事だ。
ちなみに、高さも当初の予定より高く、15mほどにした。
さてさて!
話を戻すと、立ち会うのは他に、
村の自警団の要を担うレベッカ父で副村長のガストンさんに、
弟分のアンリ、エマ夫妻。
エモシオンの元従士アベル、アレクシ、アンセルムのデュプレ3兄弟と奥さん達も立ち会う。
銭湯の建設を依頼する予定の職人さんも、興味深そうに見ていた。
残念ながら、こういう事に興味津々の子供達は学校で授業中。
教師役を務める嫁ズの何人かも居ない。
でも周囲には農作業の予定がない村民達も物珍しさから野次馬化しており……
地の魔法が発動されるのを今か今かと待っていた。
「では、スフェール様、お願いしま~す」
「心得た、リゼット殿」
何て、今度はスフェールに擬態したロヴィーサとリゼットのもっともらしい会話の後……
立ち会う俺達全員の前で……
美女魔法使いに擬態したロヴィーサはもっともらしく、
「もごもご」と言霊を詠唱し、発動のポーズをとる。
俺が「しれっ」と地の魔法を発動。
ここからはエモシオンに起こった光景の繰り返し。
すると!
何という事でしょう!
ぼこぼこぼこぼこぼこ、ぼこぼこぼこぼこぼこ、ぼこぼこぼこぼこぼこ……
オベール様ご夫妻に、事前OKを貰った岩壁が、
不可思議に土中から盛り上がって来たではあ~りませんか!
何て、ナレーションが入りそうな現象が再び起こった。
発動後、約5分ほどで……
高さ10mほどの頑丈な岩壁が、現在の防護柵の少し前に生成された。
「「「「「おおおおおお」」」」」
俺が「うんうん」と満足そうに頷く中、驚く村民達。
「いかがでしょうか? 宰相様」
何て、リゼットがおすまし顔で尋ねて来る。
「うむ、村長。宜しいと思う。ありがとう、スフェール殿。引き続き頼むぞ」
「はいっ! かしこまりました。私にお任せくださいっ!」
にっこり笑ったスフェール役のロヴィーサは演技を続け……俺は地の魔法を発動し続け……
約1時間少しで、ボヌール村防護壁の基礎となる、岩壁の生成は終了したのである。
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