第51話「らっしぇ! 再び!」
ジョアンナのボヌール村における2日目が無事終わった。
午前中は学校で授業を受け、昼は大勢で給食、午後は大空屋の店番補助、帰宅して、ユウキ家にて子守り。
また、ほんの手伝いの域だが、厨房へ入りあこがれのハーブ料理にも挑戦した。
ジョアンナにとって全てが未知で、生まれて初めての体験の連続、大忙しだったが充実した1日だったに違いない。
更に夕食後に、ジョアンナは貴族家出身のグレース、ソフィと3人で『ミニ女子会』も行った。
そう、単に勉強したり、仕事をこなすだけではない。
ウチの家族は勿論、ボヌール村の村民達とも深くコミュニケーションを取りながら、ジョアンナは生きて行く。
今まで亡き母ミリアンさんと……
そして引き取られた後はマチルドさんとだけ暮らし、日陰の花の如く王都でひっそりと咲いていた幼いジョアンナ。
彼女は、俺と出会った縁で草深いボヌール村へ移住。
そしてジョアンナは、遂にべったりだった俺から離れ、タバサ達と一緒に女子部屋で寝たのである。
そして3日目の早朝……
晴れやかな表情のジョアンナは、マチルドさんを伴い、俺を迎えに来た。
更にタバサ達女子軍団だけでなく、レオとイーサン、ポールの男子軍団も一緒である。
「ケン様、おはようございます! 一緒にお弁当を売りに行きましょう! 皆も私とマチルドを手伝ってくれるって!」
「おはよう! よし厨房へ行こうか」
「はいっ!」
と、いう事で俺とジョアンナを含めた一個連隊9名は厨房へ……
以前は大空屋で作っていた特製弁当も現在はユウキ家の厨房で作っているのだ。
アマンダとベアーテが加わってからは、メニューも焼きたてパンとハチミツと紅茶のセットというシンプルなモノから大幅に進化。
上記のセットに加え……
肉と野菜を、働く村民にはぜひ摂って貰おうという事で……
ハーブ入りの茹でたて大型ウインナー1本と、ハーブをきかせたスモークチキン入りの新鮮サラダが付くようになった。
このサラダが特に大好評で、スモークサーモンバージョンの採用も検討されている。
こうなると、さすがに値段は以前の大銅貨1枚=100アウルム、すなわち100円也というわけにはいかない。
現在の値段は200アウルム、約200円の値段設定は格安だと思う。
2倍の大幅値上げをしても、文句を言う者など居ない。
という事で、厨房にはアマンダとベアーテは勿論、リゼット、クッカ、クーガー、
ミシェル、クラリス、サキ、アマンダと……
幼子を抱えた、グレースとレベッカ以外の嫁ズが作業にいそしんでいた。
アマンダとベアーテが声を張り上げる。
「お弁当上がったよお!」
「どんどん荷車に積んでねえ!」
さすがにウチの嫁ズのパワーは凄い。
大量の弁当もあっという間に完成だ。
「よっし! ちゃきちゃき、行こう!」
「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」
俺の呼びかけに8名が応え、出来上がった弁当は続々と荷車へ積まれたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺が荷車を引っ張り、弁当は無事に運ばれた。
ミシェルがカギを開け、俺が大空屋備品のテーブルをふたつ引っ張り出す。
ミシェルとサキの指示で、テーブルの上には個別包装された弁当が並べられて行く。
そして紅茶の入った小型水筒も置かれた。
俺達の周囲には、早朝の仕事に出かける村民達が今か今かと、販売開始をウエイティングしていた。
朝の販売に臨むのは、俺と、ジョアンナ、マチルドさん。
タバサ以下、幼子を除いたお子様軍団の7名。
嫁ズは、本日の大空屋運営担当となるミシェルとサキ。
「ジョアンナ」
「はい、ケン様」
「弁当の売り方だが、まずは、俺達が手本を見せる。合図をしたら、続いてくれ。……マチルドさんも宜しいですね?」
「は、はい! 少しドキドキします」
「ははは、ふたりとも大丈夫。昨日お店に来たお客さんにちゃんと挨拶出来たじゃないですか」
「はい! 頑張ります!」
マチルドさんも緊張しながらも、気合は充分だ。
ここでタバサがフォロー。
「パパ、そろそろ時間だよ」
「よし!」
俺も気合を入れ直し、軽く息を吐く。
そして……
「らっしぇ! らっしぇ! 美味い弁当買っておくれ! 焼きたてのパンとハーブ入りの茹でたて大型ウインナー、ハーブをきかせたスモークチキン入りの新鮮サラダ、
塗り放題の蜂蜜、美味いお茶の最強セットだ。今日バリバリ働くにはこの弁当が絶対に必要だあ! さあ! 大空屋特製! 皆さんへの愛情がたっぷり入った特製弁当! さあ! 買った、買ったぁ!」
「わ、わお!」
俺の口上を聞き、圧倒されるジョアンナ。
大いに驚き、目をまん丸にする様がとても可愛い。
「ははは、いきなり全部言うのは無理だ。らっしぇ! らっしぇ!だけ思い切り言ってごらん」
「は、はい」
「さあ、マチルドさんも!」
「は、はいいっ!」
「らっしぇ! らっしぇ!」
「らっしぇ! らっしぇ!」
「らっしぇ! らっしぇ!」
「らっしぇ! らっしぇ!」
お子様軍団、ミシェルとサキの声にも後押しされ……
「らっしぇ! らっしぇ!」
「らっしぇ! らっしぇ!」
最初は戸惑っていたジョアンナとマチルドさんは、大きく声を張り上げていたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます