第2話「何と! 俺が神様確定!?」

『以上! この話は終わり! さあて! ここから本題へ入るよ~ん!』


『え? ここからが本題?』


 本題?

 タバサと行った『卒業旅行』報告の件だけではなかった。

 まだ管理神様の話は終わっていなかったのだ。

 

 わけが分からず戸惑う俺に、管理神様は言う。


『そうだよ。この前、ケン君には言ったよね? 頼みたい仕事があるってさ』


『そ、そういえば……』


 前回会った時、管理神様から新たな仕事の依頼があると言われたっけ……

 俺は、ようやく思い出した。


『ねぇ、管理神様』


『はは、何だよ~ん?』


『今、思い出しましたけど……先日、管理神様から仕事を頼みたいと言われた時にピピ~ンと来ましたよ』


『ほほう、ピンじゃなくピピ~ンとね』


 ええっと……そういう話はどうでも良くて……


『……俺、……以前、サキの事を頼まれた時と、ま~ったく同じ予感がするんですけど』


『おお、予感か。相変わらず鋭いねぇ』


 鋭い?

 というとあたらずとも遠からずって事?


 俺は真相を探るべく、更に尋ねる。


『鋭いと言うと?』


『ビンゴだよ~ん! ほぼ大当たりぃ! さっすがケン君だよ~ん』


『やっぱりそうですか! で、ほぼが付く大当たりって結構微妙な表現なんですけど……今度は一体何ですか?』


『僕からその話をする前にひとつ、事実確認して情報共有しておこうか~い』 


『事実確認? 情報共有?』


『うん、ケン君の身分に関してね』


『へ? 俺の身分……ですか? 誰が見ても、「ど」が付く平民ですけど』


『違う! 違うよ~ん! サキの話が出たからさ、よっく思い出してみてよ~ん』


 管理神様から言われ、俺は改めて思い出した。

 身分……そう、ありえない特別な身分にして貰ったっけ。


『ええっと…………あ、ああ、そ、そうか……俺、臨時で神様やったんでしたっけ?』


『そうそう、やった。間違いなくやったよ~ん。期待に応えて君はしっかり結果も出してくれたよ~ん』


 うん、サキと出会った時、俺は臨時とはいえ、神様を務めた。

 まあ、裏にはいろいろな事情があったけど。

 結果良し以上の素晴らしい結果となった。


『まあ、その節はありがとうございました。無事サキにも巡り会う事が出来ましたし、とても良い経験をさせて頂きました』


『ふふ、だよね~。 でさ! まあ改めて聞くけど、確かケン君はかつてのクッカと同じ、天界神様連合後方支援課所属だったよね?』


 あれ?

 俺のお礼に反応せず?

 何でまた念を押すんだろう?

 不思議だ……


『ええ、そうです、後方支援課所属でサキの異世界順応指導を行いました』


 と、俺が答えれば、


『ふむふむ、だよね?』


 とまた念押しというか、確認を求めて来た。

 絶対に何かあると思うけど……

 仕方がない、このまま話を続けるしかない。


『確かあの時、管理神様に認定した頂いた俺の階級はB級神だったかなと。でもあれって期間限定で、あくまでも臨時の神様……じゃないんですか?』


『それがさ~、そうじゃなくなっちゃったよ~ん』


 な?

 そうじゃなくなっちゃった?

 何それ?


『へ? そうじゃ……なくなったって? 管理神様、話が見えませんが、一体どういう意味ですか?』


『いや~、僕のうっかりミスでさ~。ケン君の神様登録を解除するの忘れちゃったよ~ん』


『え? 俺の登録を解除するのを忘れたって……それって、どうなるのですか?』


 と俺が聞けば、またもや管理神様は質問に質問で返して来る。


『うん! あれからだいぶ時間が経ったじゃない。ケン君は今回の案件も含めいろいろ善行を積んだよね? それってすっごい経験値獲得になるんだよ~ん』


『まあ、積んだような積まないような……』


『と、いう事で! ぱららららぱっぱ~! レベルア~ップ! だいへんし~ん!!!』


『???』


『レベルアップの結果、ケン君は正式に神様になってるよ~ん! ランクは仮免時のまま、持ち越しでB級神確定だよ~ん』 


 な、何~っ!?

 俺が正式に神様確定!?

 何じゃ、そりゃ~~!!!


『は、はい~!?』


『とりあえずケン君はね、後方支援課所属の嘱託扱いで、天界への引っ越しは無しだよ~ん』


『は、はあ……』


『だからぁ! 住居はそのままボヌール村在住でOKだよ~ん! 普段の生活に支障はないから、安心だぁね。じゃ、ま、そういう事で!』


 おいおい管理神様、

 嘱託とか、そういう問題じゃないし、

 

 じゃ、ま、そういう事でとか、

 内容が内容なのに!

 超軽すぎる! 

 

『これで僕とケン君の情報共有は完了! それでさ!』


 何?

 それでさって、俺を無理やり神様に仕立てあげた上、

 まだ何かあるんですか?


『今回、ケン君に頼む仕事はサキの時同様、研修の指導担当教官だよ~ん。ふたりの新人に神として経験豊富な君がサポート女神のイロハを教えてやって欲しいんだよ~ん』


 えええええっ!?

 またまた予備動作なしで衝撃の話が来た~っ!

 

 第一、神として経験豊富な俺って何それぇ?

 管理神様相変わらず超てきと~、

 話、超盛ってる!


 だって一度にふたりの女神だよ~っ!?

 サポート女神のイロハ~??

 教えろなんて、そんなの知らね~~!!

 超が付く無理ゲ~ですよっ!


『えええええっ! に、人間ならともかく! 女神様への指導なんて、俺、到底無理ですよぉ!』


『いやいや! 全然無理じゃないよ~ん。ケン君はね、クッカは勿論、あのサキでさえ、素直な子に改心させたんだから~』


『…………』


 クッカは勿論?

 あのサキでさえ?

 素直な子に改心させた?

 

 ……そんな事、もしも本人達へ言ったら、

 頭から湯気出すくらい激怒するから……絶対に黙っていよう。

 管理神様がおっしゃた事なのに、非難は俺へ来る。

 間違いない!

 

 下手したら、団結した嫁ズ全員から一斉集中攻撃を喰らってしまう……

 お子様軍団も嫁ズに付くだろうから、

 俺は家庭内で孤立無援状態になる事が確定……


 ふと……

 管理神様が一番最初にやらかした、

 ケルトゥリ様への『ちっぱいセクハラ事件』を思い出した。

 あの時も全てが俺のせいにされてしまった。

 ※第1章 ど新人女神編・第2話参照

 

 余計な事は一切言わない。

 俺が今迄の経験で学んだ真理のひとつ。

 すなわち、沈黙は金。

 至言なのである。


 管理神様はとても優しいけれど、押しの強さは超一級品である。


 仕方がない。

 覚悟を決めよう。

 ま、何とかなるだろう。


 断るのを諦めた俺は……

 軽く息を吐き、無理やり笑顔を作ったのであった。

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