第二試合 VS巨乳妹戦1

 第一試合が終わって、控え室。


 オレは――正座させられていた。


「まったく、お兄ちゃんは何を考えてるの! 今度、他の妹の応援なんかしたら、許さないんだからねっ!」


「す、すまん……」


「それに。スク水がいいなら……言ってくれればよかったのに……制服にしなきゃよかった……クマさん、見られた……うー!」


「いや、お前。制服を舐めていないか!? スカートというのはだな、その下の未知なる神の聖域に対し、探検心を掻き立てられるものなんだぞ! 男の子はみんな冒険者なのだ! オレも聖域の扉を開きたい!」


「何それ! 意味解らない! もう、本当お兄ちゃんは……! バカバカ!!」


 ぽこぽこ、と。マユが痛くない連続攻撃をお腹に放ってくる。


「でも、大好き!」


 連続攻撃のフィニッシュは、抱擁だった。


「マユはいいなあ、本当、お兄ちゃんと仲良しでさ」


「あ、リコちゃん!?」


 リコちゃんがやってくると、マユは慌てて離れた。


「次の試合、頑張りなよ。私もその……応援してるから」


「う、うん! マユ頑張るね! ありがとー!」


 キャッキャとマユはリコちゃんと抱き合い、年相応にはしゃいでいる。


 戦いはまだまだ続く。今は少しでもせんしであることを忘れ、友達と遊んで過ごすといい。


「あの、マユのお兄さん」


「え? オレ?」


 リコちゃんがオレの前にやってくると、頭を下げてきた。


「あの。一緒に観戦してもいいですか? 私……一人だと寂しくて」


「あ、ああ。いいよ。リコちゃんみたいな可愛い子が側にいてくれたら、オレも嬉しいかな」


 途端にリコちゃんがボンっと音をたて爆発した。


「え!? えええええええ!? 可愛い!? 私、可愛いですか?」


「え、あ? ああ。可愛いよ。特に君のスク水は、ナイスだった」


「きゃあああああああああああ!!」


 リコちゃんの鼻から赤い飛沫が舞い上がると、彼女は寝転がってそのまま動かなくなった。気を失っているみたいだ。


「お、おい!? 大丈夫か、これ? まったく、仕方がない。リコちゃんを医務室に運んでくる。マユは次の試合に行って来い」


「う、うん」


 オレは急いでリコちゃんを医務室へ運び込み、マユの次の対戦に向った。


 そして、数多の戦いを潜り抜けマユは準決勝へとコマを進める。


 ここまでの戦いで一つだけ解ったことがある。それは、妹に国境は無い、ということだ。


 世界中の妹たちが己の限界を越え、すべてを賭けて戦う姿は、美しく高潔である。


 もちろん、その中で一際輝いていたのはオレの妹、マユだが。


 大会2日目。THE KING OF SISTERSは3日間に渡って開催される。


 今日は準決勝までが行われ、明日は決勝だ。


「マユ。次の戦いに勝てば、いよいよ決勝……前大会優勝者、最強の妹、妹の王……彼女と拳を交えることになる」


 控え室でオレはマユとミーティングをしていた。


「うん。フランス代表の妹……マリア・ルイベルちゃん。だよね」


「ああ。最年少で……わずか10歳で世界の頂点に上り詰めた女の子だ。彼女を倒すには、あれを……やるしかないぞ」


「うん。でも……あれは……まだ未完成だし……マユ、自信がないよ」


「心配するな。オレが付いている」


「何や? もうあたしに勝ったつもりでいるんかいな。大阪代表の妹も、舐められたもんや」


 柔らかい感触が、オレの背中にあった。


「え?」


「ハローやで。マユのおにーちゃんさん」


 後を振り向くと、そこにいたのは長い茶髪をポニーテールのように結った女の子。


 白いノースリーブに包まれた爆弾のような胸が、オレの視線を釘付けにする。


 超が付くミニスカートは、後に回り込めば確実に見えるだろう。いや、回り込みたい。


「お兄ちゃんらから離れてよ、デカパイ女!」


「デ、デカパイて……巨乳ちゃん言うてーや。ま、ええわ。あたしは大阪代表の妹……富田林ユノ。坂崎マユ、あんたの次の相手や」


 富田林ユノ。確か、兄一人、弟三人を持つ妹でありながら姉属性を併せ持つ、今大会最年長の妹でオレの1学年下の高2。


 最大の武器は、その卓越したオパーイだろう。


 オレの調べによると、推定Eカップ。好きな物は納豆。嫌いな物はたこ焼き。姉属性と巨乳。さらに、大阪弁を操る関西最強の妹……。


「何やマユのおにーちゃんさん? えらい顔真っ赤やで? あたしが熱冷ましたろか?」


 そういって、ユノはオレに胸を、オパーイを押し付けてきた。


 ――やばい、萌える。


「いつまで……いつまでお兄ちゃんに触ってるのよ、このデカパイ!!」


 いかん。マユが嫉妬している。このままでは、またお説教が始まるぞ。


「あかんあかん。試合前からそんなカッカしてたら、お肌にも悪いで?」


「え?」


 いつの間にかオパーイが、いや。ユノがオレの側から消えていた。


 姿を見つけるとユノは、マユの頬をなでいている。


「い、いつの間に?」


 マユは呆気にとられたまま、ユノにペタペタ触られていた。


 信じられない。マユは今大会でもトップクラスのスピードファイターだ。そのマユの反応すら超えるというのか、ユノは。


「自分、中1やったっけ? あたしの4つ下やな……。例え年下でも容赦はせん。あんたが妹である限りな」


 マユはユノを振りほどくと、顔を真っ赤にして叫んだ。


「そ、それは! マユも同じです! 年上の人が相手でも、ぶっ潰します!」


「そいつは楽しみやわ。じゃーな、マユとマユのおにーちゃんさん。宣戦布告、確かにしたで」


 ユノはオパーイを揺らしながら、控え室を出て行った。


「……何なの、あの女……! 絶対に許せない!!」


「まあ、落ち着けマユ。こんな素晴らしい言葉がある。巨乳は正義だ! という言葉がな。ユノは悪い子じゃない。あのけしからん胸を見れば、それは一目瞭然だ。あー、あとこれも言っておくぞ? 貧乳も正義だ」


「な!? どこ見て言ってるのよ、この変態お兄ちゃん!!」


「うを!?」


 妹力で強化したのか、マユの右手がオレの横にあったロッカーを一撃で粉砕した。


「マユ。落ち着け。冗談だ。これは、お前の闘争心をかきたてるための、オレの巧みな話術だ。オレが巨乳なんぞに興味を持つわけがなかろう」


「ほ、本当?」


「ああ、本当だ」


「よかったあ。じゃあ、マユ。着替えてくるね!!」


 オレは控え室を出て会場に向かった。そして、試合が始まり――。


「巨乳は正義だああああああああああああああああああああ!!」


 オレは無意識のうちにそう叫んでいた。


 同時に、周りの観客たちから睨まれた。 


 ふん。ギャラリーが怖くて巨乳を拝めるか。


「お兄ちゃん……あとで、ぶっ殺す……」


 すさまじい殺気をリングから感じるが、あえて気にしないことにした。だって、そこに巨乳やまがあるんですもの。


 ユノは白の体操服か。けしからんな。


 穢れなき純白の体操服の中で、オパーイがあんなに窮屈そうじゃないか。


 しかも、体操服の下は黒いホットパンツときている。否が応でもヒップのラインをこれでもかと強調している。


 スク水もいいが、ホットパンツもいい。


 女神だ。富田林ユノは、間違いなく大阪弁を操る女神だ。


「何や、マユのおにーちゃんさん。えらいアツイ視線やん。あたし、燃えてくるやん。そんな目で見られたら」


 ユノはオレに気が付くと、手を振った。


 だが。だが、だ。オレの妹も負けてはいない。


 今回は、マユも体操服。さらに、下は――。


「立てよ、国民!! ジークブルマ!!」


 そう、男子にとって夢の衣類。ブルマ。


 ブルマのどこがいいのかと問われれば、オレはブルマの歴史とその素材に至るまでことこまかに教授してさしあげられる自信がある。


 オレにブルマを語らせれば、敵はいない。いや、オレの話は今はいい。ブルマVSホットパンツ。これは歴史に残る対戦だぜ!


「ほんなら、はじめよか? そうやなあ。マユ、あんたから来ーや。軽くラジオ体操でもはじめよか」


「バカにしないで! ちょっと、ちょっと胸が大きいからって何よ! マユだって、あと五年もすれば大きくなるんだからー!」


 よく言ったマユ。オレはその言葉を忘れんぞ。五年後のお前を楽しみにしている。


 マユが仕掛ける。今回は、すでに拘束具をパージした状態。スピード勝負ならそうそうひけをとらないはず!


「はあああああ!!」


 ――速い。まるで瞬間移動したように、間合いを詰めるとブルマの下から伸びたツヤのあるキレイな生足が、閃く。


 マユの右足が、ユノのオパーイ目掛けて槍のように迫った。


「大阪人はみんなイラチなんや。あんた、やる気あるんかいな?」


「え?」


 右足を上げたまま、マユは背後にユノの裏拳を食らった。


「う……」


「確かにスピードは大したもんや。けれど、あんたはそれだけや。妹力のなんたるかをまるで理解しとらへん。決勝に進むのは、あたしやな」


 ユノは、オパーイを揺らした。


「ぷるぷる揺らして、マユに対する嫌味なの? これで勝った気になるのは……早いんだから!!」


 マユの右足に青い光が集まる。


 ――神妹乱舞。一気に決めるつもりか。


「行きますっ!」


「はん。そのセリフ……『逝きます』の間違いやろ?」


 ユノは涼しい顔のまま、マユを見ている。


 何だ? 何で……あんなに余裕なんだ。


 マユの姿が消える。音速の域に達した脚力で一気に間合いを詰め、高速コンボが繰り出される――。


 その瞬間、ユノのオパーイが揺れて……マユの生足は大きく空振った。


「遅いわ。それで音速の速さやて? あんた、大阪の人間よりギャグセンスあるんちゃう? 笑いすぎて、鼻からたこ焼き出そうやわ」


 まただ。また、マユが背後を取られた。


「どうして!? く!」


 マユは驚きの感情を顔全体に貼り付けたように、呆然としていた。


 しかし……一体、何が……?


「ほんなら、こっちから行くで。奥歯かみ締めて、しっかり耐えや?」


 ユノのオパーイが揺れる。


 突如、マユの体は空中でくの字に折れ曲がり落下を始めていた。


「きゃ!?」


 そして、再びユノのオパーイが揺れる。


 またしてもマユはなす術もなく地面に倒れていた。


 これは……まさか?


 ――そうか。わかったぞ。あれがユノの強さの秘密……なら、あれを止めれば。


「マユ! オパーイだ!」


「まだこの期に及んで言うか、お兄ちゃん!! あとで膝枕で耳かきしながら、耳の穴貫通してあがるからね!!」


「違う! ユノのオパーイが揺れるたびに、時間が止まってるんだ!!」


「え?」


「ち。バレてもうたか」


 ユノはヤレヤレと言った感じに手を挙げた。


揺れる谷間の一時クロノス……それが、あたしの超妹技。この技に目覚めたのはマユ、あんたと同じ中1の頃やったわ。あんたは……うーん、習得するのに十年はかかりそうやなあ」


「そ、そんな技いりません! マユには、もっと女の子らしい乙女な技があるんです! そんな下品な技はのーさんきゅーですっ!」


 オレは覚えて欲しいがな。


 ……しかし、どうやってあの技を破る? 時間を止めるなんて反則じゃないか。


「まあ、ネタが割れたところであんたにはどうしようもないんやけどなあ!」


「く!?」


 ユノのオパーイが揺れる。


 同時に、マユの体が空き缶のようにリングを転がった。


 ダメだ。正攻法では勝てない。


 考えられる手立ては一つ。オパーイが揺れる前にユノにダメージを与え阻止すること。


 方法はある。だが、それは決勝までの取っておきだ。


 最強の妹、マリア・ルイベルに勝つために、ここは温存しておきたい。


「お兄ちゃん。アレを……やるね」


「マユ……お前、本気……なんだな?」


「うん。ここで勝たないと、何の意味もないから……」


「わかった。やってみろ。オレはここでお前を見守っていてやる」


 マユはそっと瞳を閉じた。そして、急激に妹力が低下していく。


 富田林ユノの妹力はおよそ、10万……マユのベストコンディション時を4万も上回る。


 だが。だが、だ。


「はあ? あんた、この期に及んで何をする気やねん?」


 ユノはつまらなさそうにあくびをする。


「まあ、ええわ。こっちも飽きてきたしなあ。ケリにさせてもらうで」


 来る。揺れる谷間の一時が。


 ユノはオパーイを揺らし――吹き飛んだ。


「んな、なんやて!?」


 マユは勝つ。すでにこれは確定された歴史。


 そして、マユは次の戦いで恐らく負ける。これは、あまりに肉体への反動が大きいからだ。


「あ、あんた……何や、その髪……それに、瞳の色が……ま、まさか」


 眩い金色の髪を揺らし、マユは蒼い瞳でユノを見た。


「そ、そうか。聞いたことあるで。千年に一人現れるという妹の中の妹――伝説の妹、超妹スーパーシスターを!」

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