第8話 シーキャット無双②
照準モニターに殷級の噴射口がロックされた。
「カンチョーッ!」
ノリエがはしたなく吼える。
同時にアームからタングステンロッドが突き出され殷級のウォータージェット推進機を貫通する。
「ノリエさん先ほどから注意していますが……呼ばれているようで気分が悪いの」
サヨリは眉間にシワを寄せ抗議した。
「やめていただけませんこと、その
帝国海軍のころより艦長のイントネーションは浣腸と同じである。かを下げない習わしだ。
おそらく当時の軍艦乗りは海でカンチョー!と叫びたくなる場面が来ようとは夢にもおもっていなかっただろう。
「女の子だから雄叫びじゃなく
ノリエに悪気はないのだろう。チャーミングなえくぼさえつくってみせた。
しかし次の殷級攻撃でも「カンチョー!」と繰り返すにいたってサヨリは我慢の限界をこえた。
「カンチョー、けっこう。こんどからわたくしのことは艦長ではなくサヨリさんと呼んでください。追って全クルーに通達のこと、よろしくて」
副艦長のユウは困ったようにうなずくしかなかった。
~~~~~
殷級のLED通信の青色ダイオードが激しく明滅していた。
海中では電波がすぐに減衰してしまうため従来は有効な通信手段がなかった。
水中音響電話は欠点も多くなによりも高速データ通信には不向きだ。
新しく開発された高速LED通信技術は潜水艦の運用を劇的に変えた。海上との連絡はもとより特に複数の潜水艦による現代の群狼戦術には不可欠のものとなった。
さて殷級潜水艦群はシーキャットに翻弄されつづけた。シクヴァルの爆発の余波がおさまり海中が静まってからもその居どころが不明なのだ。
ソナーを打ってもまるで感がなかった。
もはやまともに動けるのは2隻だけという惨状だ。うち1隻は離れた位置から指揮をとる司令官の座乗艦だった。
集まったデータを分析した結果、間違いなく近接攻撃であり僚艦のすぐ後ろに敵潜水艦はいるとの確信を得ていた。
攻撃の瞬間だけ姿をあらわす敵に対して僚艦を犠牲にしての一斉攻撃が決定された。
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