夢の意識《ユメノイ》

間奏 『子供たちの夜』


――とある世界。とある時代の、とある夜の話。




「ねえ、悠人、起きてる?」


「……寝てる」


「起きてる!」


「うるさいな。これで何度目だよ。つばさ」


「だって寝られないんだもん。……今日、楽しかったね」


「ああ、SL博覧会はずっと行きたかったからな。……誰かさんがいなきゃ、もっと楽しかった」


「……意地悪。ほんと、意地悪」


「小四にもなって、迷子になるお前が悪い」


「だって……犬がいたから。撫でてるうちにいなくなったのはそっちでしょ」


「俺も、俺の親も後ろから着いてきてると思ったんだよ」


「……でも嬉しかった。悠人が見つけてくれた」


「暢気だな。こっちは焦ってたんだからな。……まあ、見つけられて良かったよ」


「なんで、あの場所が分かったの?」


「あー……内緒だ」


「??」


「と、ともかく、いい加減、ふらっとどっか行く癖やめろよ」


「そんな癖ないよ!」


「いいや、ある。水族館行ったときも、この前公園に行った時も……」


「……そう言われると、そうだけどさ」


「どっか出歩くときは、……俺だけ見て歩けばいいだろ」


「なんて? 声小さくて聞こえなかった」


「なんでもない。とにかく、俺達ももうすぐ高学年だ。迷子になるのはこれっきりな」


「うん……分かった」


「一緒に寝るのもこれっきりな」


「えー!!」


「十歳にもなって一緒のベッドで寝るのはおかしいだろ」


「別にいいじゃん。お父さんもお母さんも悠人ならいいって言ってるよ」


「そりゃ俺らの親はな。けれど、友達はどうだ?」


「う……おかしいって言ってる」


「だろ? だからもう一緒には寝ない」


「……」


「それに俺の問題も――つばさ?」


「……馬鹿」


「あ?」


「折角今日、楽しかったのに。本物の機関車とか、一緒に見られて楽しかったのに……」


「ああ。あれは興奮し――ぶっ!?」


「悠人の馬鹿!」


「お、おーい、枕いらないのか?」


「いらない!」


「……すねてるのか?」


「すねてない!」


「すねてんじゃねーか。……こっちこい」


「……」


「おーい、つばさ」


「……」


「あー、もう。分かった。俺が悪かった。……最後とか、もう言わないから」


「ほんと!?」


「最後かどうかは、あー、お前次第っていうか、二人しだいっていうか……」


「??」


「……なんでもない。いい加減、寝よーぜ」


「はーい」


「……」


「……」


「……暑い。やっぱ離れろ」


「やだ」


「……どっちが意地悪だ」


「悠人には負けるよ。おやすみ」


「……おやすみ」


「……」


「……」


「……」


「……悠人」


「……」


「また一緒に、こうやって――



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