第9話『初めての魔物退治』

 まあ、なにをするにせよ、とにかく生活していかないとな。


 死に戻りができるからって、命を粗末にすんのもなんか違うと思うし。


 とりあえず明日は装備をちょっと見てみよう。


 武器はともかく、防具っつーか服はなんとかしないとな。


 大抵のものはギルドの売店で揃うみたいだし。


 当面の活動は薬草集めがメインになるかな。


 そうそう、薬草集めのおかげか、SPがちょっと増えてたわ。


 もしかしたらレベルも上がるかもね。



 よし、起きたら売店をのぞこう。



**********



 翌朝、朝メシを食った俺は、売店に顔を出した。


 とりあえず革のベストが15Gで買えたから買っといた。


 ゴブリンの皮製で、緑っぽい色がけっこういい感じだわ。


 端切れつなぎあわせてるから安いんだろうけど、つぎはぎな感じが逆におしゃれ? みたいな。


 生成りの上下とのコーディネートはよくわからんけど。


 物防G、魔防G-で、麻の服の上から羽織れるから、まるっとステータスアップって感じ?


 ゲームと違って重ね着が出来るのはいいね。


 このゴブリンベスト、触った感じそこそこ頑丈だわ。


 ただ、ステータス上の防御力は上がったけど、ベストで覆えてない腕とか下半身とかの防御力はもちろん上がってないよなぁ?


 試しにベストのあるとことないとこ適当に自分で殴ってみたら、ないとこの方が痛かった。


 いや当たり前なんだけどさ、ステータス化されてるともしかして全身に適用されんのかなー、って思うじゃん?


 でもそうじゃないみたい。


 ステータスの評価はあくまで目安程度に考えたほうがいいな。


 

**********



 以降何日か薬草採取に勤しんだ。


 ギョム草だけじゃなく、洗口液でお世話になってるミドゥークダの葉っぱや、その他3~4種類の採取を同時進行で行ったほうが効率がいいので、掛け持ちで依頼こなしてたら、1日100G前後稼げた。


 あと、予想通り戦闘なしでもレベル上がったし、なんやかんやで足腰鍛えられたのかステータスもそこそこ上がった。


 冒険者ランクについてはGランク依頼ばっかやってたからランクアップはないんだけど、貢献度はかなりあるので、一回でもFランク依頼をこなせばランクアップできるんだと。


 稼いだお金でゴブリン皮製の革のズボンとオーク皮製の革のジャケット、ジャイアントスパイダーとかいう蜘蛛型魔物の糸を混ぜて造られた蜘蛛糸のシャツ、あと、最初に俺を襲った猪型魔物ジャイアントボアの皮で出来た革のショートブーツを買った。


 何でもかんでもジャイアント何とかって名前だけど、たぶん「大猪」とか「大蜘蛛」とかそういう感じのを少しでも雰囲気出すために<言語理解>さんがカッコよく翻訳してくれてるんだと思う。


 新しい服を買って防御力は向上したけど、オシャレ指数も多少向上したんじゃないだろうか?


 革の靴は今までのペラッペラのものじゃなく、靴底がそこそこ分厚い上に安全靴みたいな感じで足先のところに金属板が仕込んであるので、物攻評価にも微妙に影響してそう。


 ただ、ちょっと重い分素早さが落ちたけど……。


 他にも下着とかいろいろ買ったせいで貯金はないけどね。


 ああそれと、冒険者ギルド登録料の返済は無事終了しだぜ!



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名前:山岡勝介

職業:薬草採取士

レベル:5


HP:168

MP:27


物攻:F(F-)

魔攻:G-

物防:F+(F-)

魔防:G-(G-)

体力:F

精神力:F-

魔力:G-

賢さ:E-

素早さ:G(G+)

器用さ:G+

運:F-



【所持金】

現金:50G

カード:83G


【装備】

革のベスト(ゴブリン):物防G /魔防G-

革のズボン(ゴブリン):物防G+ /魔防G-

革のジャケット(オーク):物防F- /魔防G+

蜘蛛糸のシャツ(Gスパイダー):物防G /魔防G

革のショートブーツ(Gボア):物攻G- /物防G /魔防G- /素早さDOWN



【所持アイテム】

歯ブラシ

洗口液

革の巾着

麻の背嚢

傷用軟膏×3

タオル

雑巾×2


【称号】

Gランク冒険者

薬草採取士:薬草判別効率UP /薬草採取効率UP


【スキル】SP:193

稲荷の加護

言語理解

恐怖耐性:Lv2

毒耐性:Lv1

気配察知:Lv2

空腹耐性:Lv1

草刈鎌術:Lv1

野鋏術:Lv1

掬鋤術:Lv1


【スタート地点】

トマセの街 西門

572/07/02

08:107:26



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**********



 その日も、いつもの様に採取キットをレンタルして採取ポイントに向かった。


 最近では根に効能がある薬草も採取してるので、スコップも借りている。


 スコップっつっても花壇とかいじるときに使う移植ゴテぐらいの小さいやつね。


 そうそう、薬草採取のおかげでスキルを3つも習得出来だぜ!


 どうやらスキルってのはSPを消費しなくても覚えるみたい。


 ちなみに<掬鋤すくいぐわ術>ってのはスコップ術のことらしい。


 こんな単語初めて見たよ。


 どれも戦闘用スキルじゃないけどね。


 最近は冒険者や門番に顔なじみが増えたから、挨拶やちょっとした雑談なんかをするようになった。


 引きこもりのコミュ障がえらく進歩したもんだと我ながら感動するね。

 

 適度に働いて、顔なじみと雑談して、夜のそれほど遅くない時間に寝て、朝早起きして仕事に向かう。


 なんだか充実した日々を送ってるなぁ、と実感できるね。



 そんな感じでここ数日を振り返りつつ移動していたら採取ポイントに到着したので採取開始。


 薬草採取士とかいう称号のおかげで、採取の効率が上がったのを実感する。


 草むらを見ても「アレとアレが薬草だな」ってのが簡単にわかるんだよね。


 で、適当にハサミ入れてもちゃんと薬草だけ採取できたりさ。


 薬草一本とってみても、茎に効能があるもの、根に効能があるもの、葉に効能があるもの、といろいろなんだが、その部位分けも効率が上がってるんだわ。


 なので、今じゃギョム草一袋で15Gもらえるようになってる。


 相場の五割増しだぜ? すごくね?



 そんな感じで調子よく薬草採取してたら、<気配察知>に引っかかるものがあった。


 ある程度装備も揃ったし、レベルもステータスも上がってきたけど、やっぱ魔物と闘う心の準備はできていない。


 だから常に<気配察知>全開で作業してたんだが、そのおかげかスキルレベルが上がったんだよね。


 そのおかげで以前より気を抜いてても、近くにいる魔物の気配を感じ取るが出来るようになったんだ。


 でも今日はちょっと油断しすぎたみたい。


 採取作業にのめり込み過ぎて、魔物の接近を許してしまった。


 向こうはどうやら俺に気付いてるようだ。



 草むらから顔を出してみると、でっかいウサギがいたよ。


 でも角が生えてないから、たぶんあれジャイアントラビットだ。


 なんかやる気満々って感じで、赤い目をこちらに向けてるね。


 採取キットで魔物を狩るのは禁止されてるんだけど、緊急避難ってことで勘弁してもらおう。


 俺は右手に鎌、左手はスコップを逆手に持ち、軽く腰を落としてジャイアントラビットと対峙した。


 こっちが怯える気配がないのを察知したのか、ちょっとだけ怯んだ。


 出来ればそのまま逃げて欲しいんだが、気を取り直して向かってくるみたい。


 無理すんなよウサ公。


 しばらくにらみ合いを続けた後、ジャイアントラビットが一気に間合いを詰めて飛びかかってきた。


 体を半回転させて、後ろ足で俺の顎のあたりに蹴りかかってくる。


 俺はそれを逆手に持ったスコップでなんとか受けたが、予想外の威力によろめいて、尻もちを着いてしまった。


 しかし、蹴りを防御されたジャイアントラビットの方もバランスを崩して着地に失敗し、顔を地面に打ち付けていた。


 ウサギは前足が短いから、人でいうところの手をついて受け身を取るってのが出来ないみたいだな。


 体勢を立て直したのは俺のほうが少しだけ早かったので、今度はこっちから向かっていく。


 敵は俺に対峙する形で体勢を整えたものの、ウサギの後ろ足って前には勢いよく跳べても、後退は苦手みたいだ。


 向かっていく俺とすれ違うように、ソイツは角度を変えて前に跳んだが、俺の右側に跳んだのが運のツキだな。


 とっさに鎌を持った右手を出すと、ジャイアントラビットは自分から鎌の刃に向かっていく形になった。


 空中で方向転換できるはずもなく、鎌はジャイアントラビットの喉を貫いた。


 鎌を引っこ抜くと、勢いよく血が流れ出し、しばらく痙攣していたジャイアントラビットだったが、やがて動きを止めた。



《レベルアップ》



 お、レベル上がった。


 さて、今日はまだ早いけど、ジャイアントラビットの死骸もって一旦帰りますか。


 戦闘で鎌使ったの怒られるかなぁ……。



**********



「あら、それは大変だったわね」


 ギルドに顔を出し、エレナさんに事情を説明すると、それほど怒られなかった。


 なんか最初と違って随分フランクな対応になったのがちょっと嬉しい。

 

「そうね……。スコップは少しへこんでて、鎌は……先端が少し曲がっているのと、骨にあたったのか多少刃こぼれがあるみたい。修繕費として5Gってとこかな」


 怒られなかったけど、お金は取られたよ……。


「ジャイアントラビットはどうする? こっちで買い取ろうか?」


 魔物ってのは皮や骨、肉なんかが素材や食材になるから、死骸まるごとでも買い取ってもらえるんだよね。


「お願いします。もしよかったら解体の見学をさせて欲しいんだけど……」


 とはいえ解体して持ち込んだほうが高く買い取ってもらえるって話をガンドルフォさん(最初に俺を殺した牛獣人の人ね)から聞いてたので、ちょっと解体には興味あったんだ。


「じゃあ解体講座、受けてみる? オススメよ」


「あ、そういうのがあるんだ」


「ええ。受講料は150G。報酬から天引きでいいかしら?」


「あー、お願いします(結構高いな……)」


 エレナさんが俺のカードを台座に乗せ、なにやら手続きをする。


「じゃ解体場へ行きましょっか。こっちよ」


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