第5話『冒険者ギルド』
さて、冒険者ギルドだが、そこに所属する冒険者というのは頼まれれば何でもやる”何でも屋”みたいなもの。
冒険者にはG~
……認めたくはないがステータスの評価ランクもGが最低って可能性が高いな。
認めたくはないがっ……!
つかAの上のSはわかるけど、さらに上の
ま、まぁ気を取り直そう。
さて、依頼にも同じようにランクが設定されていて、冒険者ランクのひとつ上のランクまでの依頼を受けられる。
例えば俺が正式登録した場合はGランクからだから、登録直後はGとFランクの依頼を受けられるってわけだ。
Gランク冒険者は最低でも週一回は依頼を受ける必要がある。
んで、サボると即退会。
その程度じゃ不名誉退会にはならないらしいから、しばらく猶予期間をあければ再登録は出来るんだと。
ただし、退会の履歴もしっかり残るんだけどね。
ちなみにGランクの仕事は庭の草むしりとか、街道のゴミ拾いとか、引越の手伝いみたいに街中で出来るものや、薬草採取みたいなお使いものばっかり。
Fランクの依頼になると、弱い魔物の討伐および素材の採取みたいのがメインになるみたい。
特に依頼が出てなくても、特定の魔物の素材を持ち込むことで依頼達成とみなされることもあるんだとか。
俺でもやれるかなあ、魔物討伐。
「あのー、例えばFランクの魔物討伐って、どれぐらいのレベルならいけますかね?」
「レベル……ですか?」
「はい、レベルです」
「……それは冒険者ランクを参考にしていただければよろしいかと。例えばFランクの魔物討伐ならFランク冒険者であれば特に危険はないという具合に」
「ああ、いや、冒険者ランクじゃなくて、レベルの方を参考にしたいんですよ。俺いまレベル4で、たぶんもうすぐ5になると思うんですけど、Fランク依頼の魔物ってそれぐらいのレベルでも狩れますかね?」
なんかエレナさんがすっげー不思議そうな顔でこっち見てる。
俺、なんか変なこと言ったか?
「えっと、そのレベル4や5というのはどういった機関が制定しているものですか?」
「いやいや、レベルですよレベル! ステータスの!!」
「ステータス?」
あれ? なんかおかしいぞ?
「あの、『ステータス!』って念じると、どうなります?」
「……申し訳ありません。そういった魔術があるのかもしれませんが、無学でして……」
言葉とは裏腹に、なんか可哀想な人を見る目でこっち見てるー!
「ああ、いえ! あれかなー、記憶が混乱してるから、変なこと言っちゃったかなあ……」
「はぁ、そうですか……」
おいおいおいおい!
もしかしてキタんじゃねーの?
ステータス機能がチートなんじゃねーの!?
「すいません、変なこといくつか訊いてもいいですか? なんか夢と現実がごっちゃになってるみたいで……」
「ええ、まあ……私でお答えできることなら」
エレナさん、困ってるみたいだけど、ここは重要だからな!
聞くは一時の恥っていうしさ!
「えーっとですね、魔物をたくさん狩ると、突然強くなるということはありますか?」
「ございますね。原理は解明されていませんが……」
「へええ、その”突然強くなる”現象はなんと呼ばれているんですか?」
「単純に”強化”と呼ばれています」
「これまで何回”強化”されたかを確認する方法はありますか?」
「そうですね……。それが出来ればいい強さの指標になるのは明らかですので、長年研究されているのですが、残念ながら確認する方法はありません」
なるほど、レベルアップの概念はあるけど、それを数値化することはできないってことね。
まあ一気に何レベルもアップすることはありそうだし、単純に回数だけ記録しても意味ないか……。
とにかく、レベルアップについては特にチートじゃない、と。
「では、スキルというのはありますか?」
「スキル……つまり技術ということですか?」
「えーと、例えば<剣術>とか<毒耐性>とか……」
「剣術はもちろん訓練場に通ったり、修行したりすれば習得できると思いますけど……。毒に関しては、例えば少量の毒を少しずつ体内に取り入れていくことで耐性をつける、という方法があると聞いたことはあります」
「えーっと、SPを使ってスキルを覚えたりレベルアップしたりって……わかります?」
「SP? 申し訳ありません、存じあげません」
そのフレーメン反応みたいな表情やめて! クセになりそうだから!!
この人言葉遣いはすっげー丁寧なのに、表情で内心バレバレなんだよなぁ。
営業スマイルも最初だけだったし……。
「例えば魔物を倒していると突然新しい技術や知識を覚えたりする、ということはありますか?」
「そうですね……、そういった話は聞いたことがあります。ある時突然知らないはずの技術や知識に目覚めることがある、と。それは”天啓”と呼ばれています。魔物を倒すことに限らずですが」
なるほど、SPやスキルは認識できないけど存在はするって感じかな。
あと、エレナさんの言い方からして魔物を倒す以外にも経験値やSPを稼ぐ方法はあるのかもしれん。
で、たぶんだけど、ある程度SPがたまったら、才能や努力に応じて自動振り分けでスキルレベルが上がるって感じかな。
ってことは、これを任意で振り分けできるのはかなり便利かもしれない!
あれか! <稲荷の加護>の能力把握と成長補正ってのはこのことか!!
これはチートっぽいな、よしよし。
ありがとう! お稲荷さん!! 生き返ったら俺も揚げさんお
「他になにかご質問はございますか?」
「あー、とりあえずこんなもんで」
「では冒険者ギルドへの正式登録はどうされますか?」
「えーっと、すぐにできますか?」
「はい、仮登録は終わってますので、後は登録料をお支払いいただきましたら、ギルドカードをお渡しして完了となります」
「あー、でも俺文無しなんですけど……」
「よろしければ依頼報酬からの天引きという形で後払いにも出来ますよ。あと、ホーンラビットの角をお持ちのようですので、買い取りも可能ですが」
なんでもホーンラビットの角は装飾品や武器の素材としてそこそこ需要があるらしい。
「えーと、いくらで買い取っていただけます?」
「見せていただいても?」
俺は腰紐に差していたホーンラビットの角を渡した。
「特に目立つ傷もないですし、上手く採取できておりますので、規定料金の50
なるほど、ここの通貨単位は
「ちなみに登録料っていくらですか?」
「失礼しました。お伝えしておりませんでしたね。登録料は100Gです」
足らんやないかーい!!
……とりあえず50Gは手元に置いておこう。
「すいません、じゃあ後払いで正式登録お願いします。あとこの角は買い取りで」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
エレナさんがカード入ってる台座を操作すると、またカードが淡く光った。
そしたらカードに俺の名前と冒険者ランクが表示された。
エレナさんが台座からカードを外して渡してくれたので、ありがたく受け取る。
「はい、ではこれで登録は完了となります」
ちなみにこのカード、失くしても他人による不正利用はほぼ不可能なうえ、万が一にも不正使用しようもんならすぐにバレて重罪なんだと。
再発行は可能だけど、紛失記録は残るし、再発行に100Gかかるとのこと。
とりあえず冒険者ギルド登録は終わったな。
あとは今夜の宿だが……。
「すいません、宿をとりたいのですが、出来るだけ安いところはないでしょうか?」
「当ギルドに宿泊施設がありますよ。冒険者の方は無料で利用可能です」
「ホントですか!? ……ちなみに安宿だといくらぐらいになるんでしょうか」
「そうですねぇ、安くても10~20Gはかかるかと……。一般的なところで50~100G程度ですね」
「なるほど。では今夜は宿泊施設を使ってもいいですか?」
「かしこまりました。あちらの階段を上ったところが宿泊施設になりますので、209番の寝台をお使い下さい。寝台入り口にカードをかざせば利用可能となっております。また、宿泊階層には10Gで利用できる浄化施設もありますのでぜひご活用下さいませ」
その後俺はホーンラビットの角の買い取り手続きを済ませた。
「カードを使ってお金を預かることも出来ますが、どうされます? ギルド内や提携店舗での飲食や買い物、施設利用料などはカード決済出来ますので、便利ですよ。」
うお、なんかハイテクだな、やっぱ
「じゃあお願いします」
「はい、かしこまりました」
エレナさんがなんか手続きすると、ギルドカードに50Gの文字が現れた。
「カードに表示されている金額は、ご本人様以外には見えませんのでご安心下さい」
おお、なかなかの安心設定じゃないか。
「じゃあ、ありがとうございました」
……疲れた。
よくよく考えれば丸一日歩きっぱなしだったんだよなあ。
休めるとわかったら一気に疲れが来たわ……。
さっきまでのワクワク感の反動も激しいな……。
指示された場所にある階段へ向かって俺は重い足を引きずりながら歩き始めた。
なんかすぐそこなのにすげー遠いぞ、階段。
「……いてっ」
あ、何かにぶつかった……、けど今止まったらこのままぶっ倒れそう。
「おい、待てや」
なんか肩掴まれた。
もしかして人にぶつかった?
そりゃ悪いことしたなぁ。
「あー、すんませんっしたぁ……」
振り返ったらでかいオッサンがいたからとりあえず謝る。
つかマジでけぇな。
2メートルぐらいあんじゃね?
肩の筋肉の盛り上がり方とかハンパねぇな。
「いやいや、人にぶつかっといて無視していくとか、呼び止められたらダルそうに謝るとかよぉ、そりゃちょっとよくねぇんじゃねぇか?」
おっしゃるとおり。
すげー顔で睨まれてるから、普段の俺ならジャンピング土下座状態だろうけど、今はホント疲れてるから勘弁して欲しい。
「すんませんっす……。疲れてるもんで……」
「へええ。お前、俺に睨まれてんのにあんまビビってねぇな」
「はぁ……」
「ちっ……、まあいいや。次からは気をつけな」
そういって男は軽く俺の胸と押した。
うん、ホント軽く押すって感じの動作だったんだ。
車にでもはねられたんじゃねぇか?ってぐらいの衝撃が来て、階段の方に吹っ飛ばされた。
「え……?」
オッサン唖然としてこっち見てるよ。
いやいや、びっくりしてんのはこっちだっての。
「お、おい! 大丈夫かよ?」
オッサン慌てて駆け寄ってきたわ。
なんか笑える。
あれ、でも体が全然動かねぇし、声も出せねぇ……。
「ちょっと! ガンドルフォさん! 何してるんですか!?」
あ、エレナさんが慌てて飛び出てきた。
「い、いや、ちょっと揉めてよ。軽く押したらよろけて階段で頭打っちまったみたいで……」
いや、よろけたっつーか、ふっ飛んだよね?
「ショウスケさん! 聞こえます? 大丈夫ですか!?」
いやぁ、大丈夫じゃないっぽいねぇ、これ。
あーあ、階段に頭ぶつけて死亡って、どこの2時間サスペンスだよ……。
「嘘だろ……。俺の睨みでビビらねぇからちょっとは出来る奴と思ったんだが」
どんな言い訳だよそれ……。
ああ、来たよ、ゾワゾワ。
だいぶマシになったけど、やっぱ嫌だなこれ。
クソ……、せっかく街にたどり着いたってのに、また森からやり直しかよ。
……………………。
「ちょっとー、なにボーッとしてんのー。後ろついていくからとりあえずまっすぐ歩いてー」
……え?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます