日記・1日目・朝

――日記・1日目・朝

 

 さて、言い出しっぺの法則よろしくわたしの方からスタートです。


 

 材料があまりないので仕方ありませんがさっくりと朝食の片付けも終わってしまいました。空いた時間に筆をとっています。


 美味しいとのお言葉をいただきましたが、好みの味や食感等あれば、直接でも日記でもいいのでコメントを下さい。いまのところ、対応できる範囲には限りがありますが力を尽くす所存です。

 

 さて、それでは少しばかりの自己紹介の真似事でもしておきましょう。

 『旦那様』に出会った電車はわたしにとっては回り道の帰り道の途中でした――恥ずかしい話、商売敵に負けそうなところで最後まで戦わずに撤退したという感じでしょうか――そして、両親のいる故郷に帰る途中に観光がてら大阪に寄ろうとしたその途中でした。


 そのおかげで、この閉鎖空間にそれなりの荷物を持ち込めたのは幸運としか言いようがないですが。――いや、そもそも、閉鎖空間に閉じ込められたこと自体が不運と考えるべきでしょうか。

 

――まぁ、起きたことについて、何か言ってもしかたないですね。


 これからについて考えた方が良いと思うのでこの話はやめましょう。


 ・

 

 あなたが客間への扉をくぐって行ってしまったのは見えました。

 説ちゃんの話では『別の星や別の世界の可能性もある』とのことでしたが、どんなところだったでしょうか。晩御飯の時に話せていなければ、ここに書いてくれると嬉しいです。


 この荒唐無稽な状況でも、『旦那様』は冷静でいてくれているようでわたしとしては安心です。とりあえず、この日記を書き終わったら、家の周りを見て食べれるものや使えるもの、他にも何かないか見てみます。


 あとは例の調理器具ですね。『谷喜六』謹製の調理器具自体に対して、あこがれもありますが、とり急いでは、保存期間を延ばす系の調理器具を探して使い方を学習してみます。


 具体的には乾燥機系列とかですね、真空乾燥、真空パックもあれば探してみましょう。塩砂糖が十分にあれば漬けておくのも出来るかと思うのですが……。まぁ、手探り感もまた、たのし、という心持で行きましょう。

 

 女性は家を守るもの、というのはちょっとばかり前時代的な考え方で若い『旦那様』には受け入れがたいかもしれませんが、今は分業をきっちりとして。――わたしに家を守らせていただければ。と思います。

 

 それでは、――台所より愛をこめて。

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