アンダ・ヘブン

吉野茉莉

第一章 風見唯について

プロローグ

 あるところに、二人の少女がいました。

 髪の短く、瞳の大きな少女は両親が事故で亡くなり、親戚もいなかった彼女は、小さな頃から両親が知り合いであったもう一人の少女の家に助けられて暮らしていました。

 その知り合いの家はとても大きな屋敷で、気を抜くと迷ってしまうほどで、広すぎてかくれんぼができないくらいでした。どんな職業の家かもわかりませんでしたし、幼いもう一人の少女も、知らないと言っていました。

 両親のいない一人の夜は暗く、悲しいものでしたが、気がつくといつも側にいてくれる優しい女の子のお陰で、楽しく過ごせることができました。

 助けられてばかりの少女でしたが、ある日、あまり活発でないその髪の長い少女がいじめられているのを助けてから、今度は自分が彼女を守らなければいけないと思うようになりました。

 それから、少女は変わりました。

 運動をして、男の子にも負けないほどになりました。大人しい女の子をいじめると、彼女にやり返されてしまうので、そのうち誰も彼女の後ろにいる女の子をいじめることはなくなりました。

 その代わり、苦手な勉強は、もう一人の女の子に手伝ってもらうようになりました。

 二人は、どんな時も一緒に、手を繋いでいました。

 それは、友情と一言ではいえないほどの仲の良さでした。

 彼女達は、いつしか高校生になりました。

 二人は同じ高校に通い、様々な友達に出会い、色々な経験をして、今まで以上に、誰しもが羨むほど仲良くなりました。

 二人は傍目には別のタイプでしたが、とても人目を引いたので異性から言い寄られることも少なくありませんでした。

 それでも、二人の関係は決して変わることはありませんでした。二人に必要なものは、他でもなくお互いなのでした。

 二人は、これからも、いつまでも、一緒にいられることを願い、また信じてもいました。

 そして、今は……

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