第138話親戚の子があらわれた!
今日(7月8日日曜日)頭を悩ませていたのは、一歳十か月の親戚の子のこと。
三児のママは、一歳児はプールにつれてゆけないからと実家に(我が家に)預けていった。
しかし、比較的新しく加わったメンバーのために意思疎通が難しい。
ママが笑顔でいなくなると、超音波か波動砲かっていうくらいに大泣きする。
「ママは帰ってくるよ。待ってれば帰ってくる」
と、繰り返し言ったら、泣きながら指先を表へ向けて「ばぶ」という。
わたくしあかちゃん語はわからないので「ばぶ」と言われても……。
とにかく、表へ行けば気がすむのだろうと思って抱いて(靴は自分から履いた)いつもママが車を止める場所へ向かった。
暖かな陽ざしに涼風が吹く。カラスが鳴くから、R君はごきげんだった。車の場所に行って道端のすみっこで座っていたら、蚊がプンプン集まってきた。R君の手足首筋が狙われるから、ふうふう吹いて追い散らしたのだけれど、敵は子孫繁栄がかかっている。そう簡単にあきらめてはくれない。
そして、R君もなかなか手ごわい。
カラスを指差すから、カラスが見たいのだろう、と木立の下へ行く。
しかし大人はそういったことに集中力が続かないのだ。
「かあかあだよ。カラスさん」
なんども言ったけれど、R君も気を散らしている。
ここいらでいいのかな? と思って玄関へ向かうとまた「ばぶ」(そうじゃない、と言っている?)というので歌を歌った。聖闘士星矢のビューティフル・チャイルドだ。サビだけくり返したら、なぜかたくさん小鳥が集まってきて、R君はきょろきょろ。
そのまま帰ろうとしたら、玄関先で「ばぶ」。え? まだなの? なにがしたいの? わからない。いったん家に入って「ばぶ」「ママ来る、ママ来る。待ってれば来る」「ばぶ」押し問答みたいなのが続いた。だっこする腕もくたびれる。玄関先でダウンするわたくしをよそに、超音波で哀しみを訴えるR君。結局それを三回ほどやって、(時間も二時間かかって)ようやく答えにたどり着いた。
R君もおバカさんではないから、水を飲む? と言えば泣きやむし、靴を履いたままリビングにいれてしまったのは教育上よろしくない気はしたけれど、とりあえず水は飲んだ。しかしまた「ばぶ」!!!
んもー。つかれたよ。R君はねえねがひっくり返ってダウンするのを許してくれない。
しきりと指で何かを示しているので、いちいちそちらの方へ歩いていって、わんわんかい? アイスかい? 公園かい? と様子を見るのだが全然的外れ。
そして「ジュース(自販機が指さす方に設置されている。ここからだとみえないけれど)飲む?」と尋ねたら、なんとなんと、R君、初めてこっくんと頷いた。
――これは母がいつも散歩のときにジュースを与えているからだ――わたくしは直感して、R君に言った。
「そっか。じゃあ、お金を持ってくるからちょっと待ってね」
そうしたら、玄関で座ってちゃんと待っているんである!
わたくしは十円玉十三枚をとってきて、R君の手で一枚一枚、コイン投下させた。いや、やりたがりそうだと思ったので。事前に何が好きか、示してもらったら、R君、わたくしの腕の中から小さいお指を差し出して、「りんごジュース」のボタンをぽちりと押した。(やっぱり! いつもここでこのジュースを買ってもらっていたんだ)
がしゃこん。と出てきたジュースを、R君、自分でとり出し左腕に抱える。だっこし続けたのでだるだるになって右手をとる。わたくしの手を拒み通してきたその手が確かにわたくしの手を握り返してきた。
――ようやく「ばぶ」の謎が解けた!
その後は祖母に任せて、独りクーラーのきいた部屋に閉じこもったが、それくらいは許しておくれ。鏡を見たら、顔が真っ赤。深紅にそまっていたのである。悲しい。やけどみたい。サンバーントって言ったっけ? 日焼けはやけどだよ。つらかったー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます