第134話ぐだぐだっと日曜日
相棒、元気かい。わたくしは疲れた。疲れている。
祖母のことを書くが、彼女が部屋を移動するたんびに本を動かせ、いらない本を捨てろとチクチクやられる。
部屋に置いてある本は、資料なので捨てられないお、大体後から来た祖母が面倒くさい。
もう、客間のコタツ、これを処分しよう。
そう言ったら、母は賛成。よし、部屋の角に立てかけるぞ、と立てかけたら。
夜、ずしん、と地響きが。
「どうしたの? 誰か、なにか倒れたの?」
と階段向こうへ問いかけるも、
「ん? なーんにも」
母ののんびりとした返答あるのみで、そんなわけはなかろう、と客間へ入る。
すると祖母が「化粧水を取ろうとして」コタツの天板をひっくり返したらしい。
「直すよ」
立てかけたのはわたくしだからして、責任はとる。
しかし、天板を倒した祖母は、
「床の間の花瓶が倒れて水がこぼれたけん」
といって、雑巾を差し出してくる。
「ええ? 水なんてよく見えないなあ」
目を細めて雑巾を受け取り、床の間に踏み入るわたくし。
だが、花瓶の中には埃が入っているだけで、床をなでても水のこぼれた形跡はない。
「おばあちゃん、水なんてこぼれてないよ」
というと。
「そのへん、花瓶からこぼれるのを見た」
言い張る。
言っておくが花瓶の中は空っぽ。松の枝が白くなって倒れているだけ。
「花瓶の中は空だよ」
「水がこぼれたから」
「水なんてこぼれてないよ」
「こぼれるのを見た」
おかしい。彼女の証言は事実と反する。
彼女は今年、白内障の手術をした。視力はいいはずだ。
だが、夜だし。灯りはLEDほど明るくないし。部屋のすみっこで起こった事件である。
祖母の見間違いだろう。
わたくしは事実だけ説明して、天板を別のすみっこへ立てかけた。
「おばあちゃん、この花瓶の中は埃しか入ってないよ」
それでも祖母は「こぼれるのを見た」と言い張って、雑巾を引っ張ったり伸ばしたりしていた。
しかたがないので、花瓶の底を見せて、はいおしまい。
くっだらない事件だったぜ。
化粧水を取り出すだけで、立てかけてあったコタツの天板、ひっくり返すおばあちゃん。
欲求不満なんだろうか。
非常にくさくさするので、これ以上は書かない。
わたくしは責任はとったし、そもそも天板をひっくり返したのはわたくしではない。
花瓶の底は乾いていて、水などはなから存在していなかった。
ゆえに、雑巾の出番はなかった。
それだけだ。
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