第130話今日はからめ手

 昨日は病院で、家族から疎外感を感じていることを先生に話した。

 どういうことかというと、妹にあかちゃんが生まれた、お食い初めがある、誕生日パーティを開く、というときに、親戚中が集まるのに、わたしだけ置いてけぼりをくらうんだ。


 クロックマンが「一人は怖くない。けど、寂しいんだなあ」と横で呟いている。


 わたくしも、子守やら家事手伝いをしてきたのだが、度外視である。

 泣きじゃくる赤ん坊を、この腕であやして、寝かしつけた。

 妹と母の食べた後の皿を、コップを、箸を洗って磨いて、整理したのである。

 妹は「そんなのあたりまえ」という顔でいる。

 こういう妹だから、わたくしをパーティーには呼ばない。

 プレゼントの請求だけしてくる。


 もう、わたくしは妹と関わりを持ちたくない。

 こないだも、おもちゃ箱に追加しておいたパズルをお持ち帰りしたうえに、買ったばかりの『アイドル戦士 ミラクルちゅーんず!』DVDをわたくし二話までしかみてないのに、ごっそり借りていった。

 なけなしのお金で買ったものを、さも当然そうに持っていかれると、心がしょんぼりする。


 しょんぼりはまだある。

 祖母が、ツアー旅行での記念写真を送ってもらったらしいので、見せてもらったら、あきらかに祖母よりふっくらした人をさして「ほっそりしている」と表現した。

「おばあちゃんはこの人の腕を『まあ、太かコツねえ』とか『ま、顎が二重になって』とか、言わないよね、どうして?」

 と尋ねたが無視された。

 あかの他人に言わないことを身内にいう人なんだな、と思った。外面がいいのだ。


 で、最近気づいたのだが、祖母は夕食が終わると、空になった食器を前に腕組みしていばっているから、ならば、と思って食器を流しまで持って行って洗ってやった。

 すると、急に身を小さくして、自分はドレッシングなどをキッチンに運ぶから、さっととって、冷蔵庫にしまってやった。

 すると、することがなくなった祖母は、態度が小さくなった。


 鑑みるに、祖母は家事をすることが、えらいと思っているようだ。それをひとにやられてしまうと、所在なげにTVなどを眺めている。


 わたくしは周囲の人にしょぼくれては欲しくないなあ。これは全くの計算外。

 祖母にはふんぞり返っていてもらった方が、長生きしてくれそうだ。

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