第120話私のリラックス

 昼間に出かけて、帰って来ておやつを食べたら、車を運転していた母が疲れた、少し寝ると言い出した。

 なんとはなしにわたくしもソファに横たわった。


 カチャカチャ、洗濯ものをいじる音がする。

 そういえば花粉がマックス飛んでたって聞く。

 部屋干しを勧めてよかった。


 ビートルズをかけた。

 ポリポリサクサクとスナック菓子をかじる音がする。

 おばあちゃん、ビーノが気に入ったんだな。また買ってこようと思う。


 アイラービュー、アイラービュー、アイラービュー、と歌が聞こえる。

 ちゃきちゃきちゃき、とはさみを鳴らす音がする。

 母が寝苦しそうに吐息を吐く。

 わたくしはぼんやり窓へ視線をやる。


 アイニージュー、アイニージュー、アイニージュー、と歌が聞こえる。

 ガタガタ、ガタタッと机の上に硬いものを乗せる音。

 おばあちゃんのこういうホワイトノイズは、普段なら気にならないのに。

 わたくしはふいに、リラックスできてないことに気づく。


 アイウォンチュー、アイウォンチュー、アイウォンチュー、と歌が聞こえる。

 もう、おばあちゃんが何をしようとかまわないぞと心に決める。

 窓の外に目をやると、おもての電線が風に揺れるのが、レースのカーテンにうつる陰影でわかる。

 トットット、とおばあちゃんが窓辺に寄る。

 ガタガタガタと窓を開閉し、雨戸を閉め、分厚い冬のカーテンを閉めてしまった。


 もう、何がしたいのか。


 わたくしのリラックスを返してよと言いたい。


 おばあちゃんめー!!!


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