第97話周りの人を笑わせる

 これはもう過去の話なのだが。わたくしは日記をつける習慣があった。

 で、病気にかかった際に、世間話としてペロッと主治医に話したところ、彼は

「今日のことも日記に書くのかな?」

 と言いながら、つるりと禿げ頭をなであげたのだ。

 取り繕う気もなさそうな感じだったので、「あれ?」と思って憶えていた。

 病気だったので意識がもうろうとしており、そのこと自体を笑ったりするメンタリティーは持ち合わせていなかった。

 ところが「あの先生、気にしてたのかな」と不思議に思い、家族に話したところ、妹に大うけ。お腹を抱えて笑うのである。

「頭をつるっと! 頭をつるっと~~」

 くり返している。

 くり返しますが病気だったので、気力も何もないのに、その笑顔を見てるだけで、なんだか元気が出てきました。そして今は当時の主治医に感謝しています。

「日記に書かれるかも」

 という、たったそれだけのことで笑えるリアクションをしてくれた先生。

 髪がなくったって、あなたは魅力的なのです。

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