第80話世界に挑み、人を愛した神様

『モアナと伝説の海』を観てきた。

 貴種流離譚と成長物語のドッキングで、ヒーローとヒロインが別個に存在していた。

 海に選ばれしモアナ=ニューヒロインと千年の間封印されていた太古の英雄=半神半人のマウイ。

 民族の危機を救うため海に導かれたヒロインが伝説の神と対峙する。

 それは過去の英雄を俯瞰する行為であり、新たに見直す絶好のチャンスなのだ。


 ああ、あまりに感動して泣けてしかたがなかったので頭がぼうっとしてうまく分析できない。


 サントラで聞いて好きになったマウイは、親に捨てられた人間の子供だった。だから、神となっても……人間に愛されたくてなんでもあげてしまう人になってしまった。

 彼は「愛されたかったけどダメだった」という。アガペーではなく、一人の孤独な男の影を背負って千年もの間洞窟に封印されていたのである。

 わたくしは、サントラCDをはじめに聞いた衝撃と理想を重ねたのちに得た着想に理想をのっけすぎていたので、映画のマウイには度肝を抜かれた。

 あまりに面白く、無邪気な子供のようで目が離せなかった。日本語吹き替えの声優さんもかっこよく演じてくれてた。


 クレジットを涙でかすむ目で見送りながら、また……と思っていた。

 またマウイに逢いたい。またマウイの話を見たい。マウイの見てきた人生を見てみたい。マウイの物語を知りたい、と。

 彼が愛情に飢えていたように、わたくしも彼の神秘性に興味津々。


 モアナもよかった。ヒーローの理解者となっていく依頼者。そして使命をもち、帰ってくるための旅に出かける勇者。(英雄マウイは援助者なのだ)

 こんなに面白いと思ったのは久々だ。


 そして、やっぱりディズニーを描くことは至難であり、はっきり自分には無理だと思った。

 同時に、必ずモアナを越える大作を描いてみせると心に誓った。

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