第36話お絵かきその2「リアル顔」へ移行

 夕べ、寝付けなかったので、漫画絵の基礎をやった。

 紙一枚に12個の丸、それにアタリを書いてあったやつに顔のパーツを描きこんでいく。それを五枚。区切りのいいところで、次の課題の「リアル絵」に挑む。注意書きには「好きなキャラの絵でもいい」とあったので、迷わず「艶漢」①の表紙の「山田 光路郎」くんを描く。

 昨日から着々と基礎をやっては来たが、五枚つづりが17束、ようやく感じが戻ってきた。このころになると、丸はA4の紙の半分の大きさになる。一気にハードルが高くなるなあ。


 しかし、見ながら描くのは大得意。

 中学生の時に、学校の巨大画の下絵、主線描きを担当した。受験前だった。わたくしは友人と遊ぶ(!)約束をしていたので、彩色はパネル五枚で勘弁してもらったが、約束には間に合わなかった。走ったのに……。

 高校生の時は「幽☆遊☆白書」の浦飯幽助と「スラムダンク」の流川楓とクレヨンしんちゃんの主人公の等身大(よりちょっと大きくなってしまったのだけれど)のアニメ絵をポスターカラーで描いた。

 下書きに一日、主線描きに半日、色塗りは色指定をして、美術部の友人たちに手伝ってもらった。学園祭の折りである。急ごしらえだったが、会心のでき! ドラゴンボールのチビトランクスと悟天のツーショットを塗り絵にして、くばったりもした。

 売ってくれと一般参加者(主に男のお子さん)や美術部員にさんざん言われたが、みんなで作ったものだから自分の一存では決められないといいつつ、思い出のために一人でごっそり持ち帰った。今は手元にない。残念だ。


「艶漢」は理想の絵のひとつだが、わたくしは油絵学科で人体解剖図? を配られてから「おえ~」っとなったので、筋肉とかマジ描けない← ヌードは無理だし、着衣で初めて秀をとった。教授が顔だけ描いてくれたのでおかげさまである。

「君は見たままを描いたほうがいいね」

 教授に言われたが、それは「よく見て描きなさい」という意味なのか、それとも「他の人のように幻想に走らないほうが良い傾向」であるとみなされたのか、よくわからない。

 一応「黒をよくここまで追求した」と言われたのは、褒め言葉ととった。くたくたになって、モデルさんの履いているズボンを「ハイライト」入れたり、ありえない「照り返し」をさしてみたりと工夫した。

 つまりそういうレベルなんである。

 その時の絵も今はない。ちょっと仕込みをしておいたので、家族にポイされてしまった。運が良ければ、今も納戸に入っているはずである。

 仕込みというのは、なんというか。下塗りに発色剤と共にマゼンタを使い、仕上げの段階でこげ茶で塗り固めたのである。こうすると、時と共に、画面が赤くなっていき、非常に情念を感じさせる、不吉な絵になるのだ。

 これはマゼンタが時間の経過と共に下から浮かび上がってくる性質を悪用してみた。確か、背景が炎に包まれたように点描が浮かんできていたはずである。時を超えたマジック。

 うっひっひ。こういう冗談、大好き。

 ちなみにシアンも同様で、下塗りにはビリジアンやアンバーを使うのが通例だ。

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