第一章その9.音哉と雅人叔父サン

 親友の音哉が心配そうに語りかけてきた。

「純太と神羽屋さん、大変だったね。もう、体調は大丈夫?」

 緊張感が抜けた為か神羽屋は自然と地面に座り込んだ。

 親友の麻倉あさくら音哉おとや頭脳ずのう明晰めいせきで性格もいい。3年前、両親の都合で神無木市に引っ越してきた。中学時代に転校生としてクラスで一緒になって以来、音哉とは親しい。お互い名前で呼び合っている。

 無事に助かったと安心していると自分は、ふと一つ疑問に思った。

「でも、どうして音哉はここが分かったんだ?」

「図書館に立ち寄った帰り道に偶然、純太の御兄さんと出会ったからだよ」

「ちょっとした依頼があってね。それで、ここらの地域を調査しているとかん交差点の近くで音哉君と偶然にもバッタリ出会って…」

 雅人叔父さんは、ホッとした面持ちで語ってくれた。雅人叔父さんは二十四歳と若いけれど、従兄の叔父さんにあたり、いつも長身の痩せ型で程よく七三と黒色のスーツが決まっている。俳優の及川おいかわ光博みつひろさんに風貌ふうぼうが似ている。楽天的で一見、呑気のんきに物事を考えているのかと思えば、そうでもなく数々の難事件を解決してきた名探偵であったりする。そして、"式神の奇術師"という異名を持つほど式神使いの腕がよく市村家の中では一・二を争う実力がある。そのため世の中では探偵の名と共に有名である。雅人叔父さんらしく呼び方は、お兄さんでも叔父さんでも良いらしい。自分は雅人叔父さんと呼んでいる。因みに雅人叔父さんからじゅん君と呼ばれている。そして雅人叔父さんの様な式神使いになる事が自分の目標だ。

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