第一章その4.突然の悪夢

「そう言えば…」

 自分が話を返そうとした時だった。突然後ろから、この世のものではない様なうなり声が聞こえた。神羽屋は木箱から式神の札を一枚取り出し、自分に小声で語りかける。

「式神を発動させる用意をした方がいいわよ」

 その言葉にうなずいた後、自分は木箱を見つめた。不利な状況は確かだ。住宅街の路地、左右にはへいがある。自分の木箱にある式神の札は充分にあるとは言えない。後ろを確認していない為、何匹いるのかさえ分からない。逃げようとしても、ぐに追いつかれておそわれてしまう…自然と冷や汗が輪郭りんかくつたう。自分は木箱から式神の札を一枚取り出した。振り向いてうしろの奴が、もし"そいつ"だとした場合、直ぐに式神を発動させる。それが自分達にとって最善の策だ。徐々に自分の鼓動が早くなる。意を決して後ろを振り向いた…その先には四匹の狼達がいた。

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